こんにちは。氷見市地域おこし協力隊の山下 健太郎です。
いつもは空き家バンクの記事を中心にみらいエンジンの記事を書かせていただいていますが、今回は私が企画しているテント芝居「氷見結テント」についてご紹介したいと思います。
今年5月に、「氷見の文化と景色を詰め込んだテント芝居をつくる」ことを目指して氷見結テントという演劇サークルを立ち上げました。
初年度はテント芝居で全国を巡っている「劇団どくんご」を招き、その芝居づくりのノウハウを学びつつ多くの方に氷見結テントという存在を知ってもらおうと公演企画を立てました。
実際に9月1日、2日の2日間、朝日山公園にどくんごのテントが立ち、両日合わせて123名の方に実際にテント芝居とはどのようなものなのか感じていただくことができました。
合わせてどくんごのテント設営を手伝ったり、実際に劇中で取り入れている即興シーンを体験したりするワークショップを開催しました。
公演を観に氷見に来た方も、地元の方たちも楽しんでもらえる公演になったと思っています。
なぜ「氷見結テント」が生まれたのか
まず、なぜ氷見で演劇を、しかもテントでやりたいのか?ということについてご説明しなければいけないと思っています。
語り始めると長くなるのですが、簡単に言うと
- 氷見には現在のところ演劇を楽しむ場所がないから
- 小さなまちでも演劇を作ることは文化として重要だと思うから
- 風景を活かした芝居ができるテント芝居は地方に向いているから
という3つの理由があります。
現在氷見市の文化会館は休館中で、新しい文化会館のあり方について議論されているところです。
といって、演劇ができる場所が全く無い状況が続くのはどうなんだろう……と思っていました。
そこで、劇場は自分たちの手でつくれるということを知ってもらいたくて、以前から好きだったテント芝居を自分でやってみよう!という気持ちから動き出しました。
私自身は高校で演劇をはじめて、大学に進学してからも住んでいた寮の仲間と一緒に演劇をつくって見てもらっていました。
特に大学に入ってからは、ホールで上演される演劇ではなく、食堂の一角やただの空き地などの普段演劇とは縁のない場所に演劇空間をつくるのが大好きになりました。
現在私は空き家のDIY改修やリノベーションに関わることも多いのですが、場所に新しい意味合いを見出して楽しむという点で、テント芝居と共通点が多いなと思っています。
氷見の様々な場所で、その土地が持つ魅力にみんなで気づくことができるテント芝居ができればいいな……と思ったわけです。
また、私自身地域おこし協力隊を卒業しても氷見に住み続けたいと考える中で、自分の趣味を思い切り打ち出せる場所であればずっと楽しく住み続けることができるだろうと思い、「テント芝居をつくる!」ということを一つの夢として語らせていただきました。
すると「私も氷見で演劇をしたいと思っていた」という声が思ったより多く聞こえてきたので、これは実現するしかない!と踏ん切ることになったのです。
朝日山にテントが立った
劇団どくんごは大学時代の芝居仲間が縁で観るようになり、迫力があり単純に楽しめるだけでなく、小さなテントの中に広い世界や宇宙を感じさせる創造性に魅入ってファンになりました。
どくんごは半年以上をかけて、本拠地の鹿児島から北海道へ、そしてまた南下するというツアーを毎年のように行っています。
全国各地にファンがいて、自分のまちで上演してほしい人が「受け入れ」としてその土地での公演をサポートするという形でツアーは成り立っています。私もいつか自分で受け入れてみたいと思っていたので、この際手を上げてみたら来てくれることになったのです。
こうして、朝日山公園にテントが立ちました。
公演場所が氷見高校に隣接していることもあり、ぜひ氷見高校の学生さんにテント芝居を体験してもらいたいと考えてワークショップという形で招待しました。
教頭先生にお話を伺ったところ、氷見高校には演劇部がないということを聞き軽くショックを受けたのですが、それでも演劇に興味のある女子学生が2名参加してくれました。
テントが劇場になり、その中で即興劇を楽しむというワークショップの中で、日頃触れることのない体験に夢中に取り組んでくれたのが、自分がはじめて演劇を体験したときのことを思い出しとても嬉しかったです。
そして、ただ公演を行うだけでなく氷見の地元の人たちと交流をして、飲食をしながら気軽に芝居を楽しんでもらいたいと考えて飲食屋台の出店をお願いしました。
「○○○のしごと塾」のみなさんには、島尾の自家焙煎珈琲「ロイター」さんのコーヒーと鞍川の洋菓子店「パティスリー・シュン」さんのチーズタルトを提供していただきました。
○○○のしごと塾の皆さんには、ただ出店するだけでなく、地元への集客や広報についてひとつのチームになって協力していただきました。元々土地の繋がりがない中で集客には苦戦しそうだったので、本当に感謝しております!
公演を見た地元の方たちも大盛り上がりで、劇団の方も「地元の人が多くて新鮮な客席だった」と喜んでもらえました。
キッチンカーの「138(ひみや)」さんも氷見牛メンチカツバーガーなど、氷見の名産を活かしたフードを提供していただきました!
公演自体も、特に朝日山から見下ろす氷見の夜景を背景にしたシーンなどはとても感動的でした。
初日は特に海から吹く「あいの風」を受けて、テント自体が飛ばされそうな異様な雰囲気がさらに客席の熱を高めた感がありました。
また劇中ゲストとして、地元劇団「からくり玉手箱」や「P.O.D.」の方たちも参加した幕間劇「クラムボンの意味論」も上演することができました。こちらも独特の空気を醸しだす舞台が出来上がりました。
公演後はその場で打ち上げを行い、東京・長野・福岡など全国から集まったどくんごファンと地元の方たちが交流し、楽しんでいる様子が見られました。
次は本当に手作りの演劇ホールです
今回はプロの劇団を招いての公演でしたが、いつも生活しているエリア内に劇場ができて芝居を体験するということの面白さを多くの方に体感してもらうことができました。
これを実際に自分たちの手でつくり、まちに住む人たちと一緒に体験すれば、さらに文化として成熟していくのではないかと思います。
ワークショップに参加した高校生も「氷見高に演劇部をつくりたい!」と気持ちが高まっていました。今にも演劇をつくりたいという人たちの思いが溢れてきそうなので、受け止める場所を作りたいですね。
もしよければ、この記事を読んでいるあなたも手作りの演劇ホールに参加してみませんか?
(文章:山下 健太郎 写真:山下 健太郎、浅見 杳太郎、大坪 史弥、村江 剛)