氷見に暮らす私たちと、
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一緒につくる、まちの未来。
2020.07.21

氷見の祭に惚れこんだ職人、信念の一杯。

岸本乃梨子
岸本乃梨子
移住相談員

ラーメンは好きですか?

みらいエンジンスタッフの岸本です。

もはや日本人のソウルフードと言っても過言ではないラーメン。
日本各地それぞれに味も特徴も具も全く違っていて、富山県ならブラックラーメンなど、今やご当地ラーメンも数えきれない程ありますよね。

市内をゆるりと流れる湊川沿いに、蔵を改装したラーメン屋さんがあります。
それがこちら、「氷見ラーメン」さん。

使用している材料は地産地消にこだわった氷見産のものが中心。
地元の食材を使った氷見生まれのラーメンだから、氷見ラーメン。……というわけではないんです。
シンプルかつ分かりやすいその屋号にも、実はとっっっっ……ても深い意味と熱い気持ち、そして氷見への愛、敬意までもが込められているのです。

筆者がこのお店に最初に入った日の事はもう忘れてしまいましたが、今では大好きでよく訪れるお店です。
店主の伊藤さんは、真面目で職人気質な方ですが、とても愛嬌があっていつもニコニコの笑顔で迎えてくれます。

そして伊藤さんはお隣り石川県から氷見に惚れこんで移住&開業をした移住者さん!
忙しいお仕事の合間に、お話を伺ってみました!

石川県の飲食店に勤めていた伊藤さんは、仕事で知り合った方からのご縁で、氷見で別の飲食店の手伝いをする事に。
初めは「3年くらい行ってみるか」という気持ちで氷見へ移住してこられました。
2年ほど勤め、さてそろそろ自分の店をと考え始めた頃には、氷見をすごく好きになっていたそうです。
「店をやるんだったら氷見でやりたい」
スタートの場所として氷見は面白いかもしれないと考えた背景にあったのは、たくさんの友人との出会いや、土地柄がとっても肌に合っていた事。
そして、なんといっても大きかったのが、氷見の祭りとの出会い。

初めて氷見の祇園祭を知った時の事を、伊藤さんは「カルチャーショック」だったと語っています。

伊藤さんの地元の石川県では、年々祭りへの参加人数が減っていて、三年に一度の開催になるほど規模縮小していたり、町内の盆踊り大会か、金沢市内で数日間かけて行われる加賀百万石まつりのような大きな祭りかのどちらかでしかなく、伊藤さんは祭りに対して好きという気持ちは無かったそうです。

そんな伊藤さんが氷見の祇園祭に参加する事になり、周りの人達に「ケガしないように気を付けて」と言われ、「祭りで気を付けるって、どういう意味?」と首を傾げながら参加。

激しくぶつかり合う太鼓台に「ケガしないよう気を付けて」の意味を理解しながら、同時に「すごく楽しい!」「こんな祭りもあるんだ!」と感じたそうです。


(画像は昨年の記事「氷見夏の大イベント『祇園大祭』」より)

近所の人達が集まって楽しんでいる姿や、進学や就職などで県外に出ている人たちが「祭りだから」と氷見に帰ってくる姿に、氷見の人達の地元愛、地元にかける想い、地域民のキズナの強さを「カルチャーショックだった」と表現するほど、大きな出来事だったようです。

好きじゃなかったものが大好きに転じる瞬間って、化学反応のように、想いと思いがぶつかり合った瞬間なのでしょうね。
伊藤さんに起こった氷見での化学反応、実はこの後にもまた起こることになります。

氷見での開業を決めた伊藤さんがまず直面したのは金銭問題。
しかし、またしてもご縁があり、氷見の方から出資のご縁がったそうです。
ただ、その方はとても熱い方で、「まずはどこかの店で修行を積んでから」と考えていた伊藤さんに「店やりながら修行すればいい」と言葉をくれたそうで、伊藤さんご自身が納得したこともあり、まずはお店を開くことに。
そしてラーメン作りが始まります。
家庭用のキッチンでは上手くいく試作品も、業務用の火力では上手くいかず、失敗続き。ラーメンの味が完成し無いままオープン初日を迎えます。

オープン初日は、広告を大々的に打っていたこともあり、長蛇の列。

しかし、並んだ挙句に味が完成していないラーメンに「不味い!」と怒って帰る方が多かったそうです。
オープンから一ヶ月が経ち、急激に客足が遠のき、クレームや罵倒がだけが増えていく中でも、決してくじけることだけはしなかった伊藤さん。
お客さんの意見を聞きながら、しょっぱいと言われたらしょっぱくないように改善するなど、味を変え続けた結果、「トンネルに迷い込んだように、毎日味の違うものを作って、自分の味が分からなくなった」と当時のつらい日々を振り返りながら語ります。

お店に来るお客さんからのクレームだけでなく、インターネットの掲示板で悪い言葉を書きこまれたり、所謂「アンチ」のような人達からの見えない攻撃もあったとか。
さらに、店名に「氷見」と掲げていることにも多方面から非難の声を受けるように。
「氷見の名前をそんなに簡単に使わないでほしい」
聞こえてくる苦言に、「氷見が好きという気持ちでやっていただけに、ショックも大きかった」そうです。
しかしこのままやめてしまったら、「あぁそんな奴もいたね」「やっぱりあいつはダメだった」というだけの存在になってしまう。
「絶対に諦めないでおこう」
氷見という地名を店名に入れるからには、もっともっと氷見のことを知らなくては、と図書館にこもって氷見の歴史や文化も勉強したとか。
悩んでは前を向き、立ち止まっては顔を上げ、ひたむきに歩み続ける伊藤さんの背中を押してくれたのは、やはり人の温かさでした。
「悩む必要ない。自分を信じてやれ」
「ラーメンはセオリーは無い、邪道が正道に、ルールが無いから自分が思うように作ればいい」
様々な業種の先輩方からそんな言葉をもらい「吹っ切れた」伊藤さんは、自分だけの味を信じ、ラーメンを作り続けます。

すると、ここで起こったんです。二度目の化学反応が。

吹っ切れてから1~2年が過ぎたころ、ちらほらと客足が増え始め、「北陸ラーメン博」(石川県開催、石川、富山、福井3県参加)というラーメンイベントへの出展の機会を手にします。
結果は、開催3日間で売上2位、富山エリアではなんと1位。
その直後から、バッシングしていた人達がなんと応援してくれるように。
「やっと結果を出したな!」
「市外に出ていく人も多い中で、県外から氷見へ来てくれて、氷見という名前を使って、地名を広めてくれている」
決して諦めずに進み続ける伊藤さんの姿に、周囲からの反応にも変化が訪れます。
さらにそこから東京ラーメンショーに出るなどイベントが続く中で、今度は、アンチだった人達がファンに変わり、罵声は応援に変わっていきます。

「氷見に恩を返したい」という信念の元、頑張り続けてきた伊藤さんの想いと、「中途半端なモノで氷見を名乗って欲しくない」という両者の熱い想いが出会った結果、化学反応が起こって新しい結果が生まれたのだと筆者は感じました。
そのどちらにもあるのは、地元愛の強さです。
「氷見にのれん分けしてもらっている気持ちでいるから、氷見という土地、ブランド、氷見という看板の名に恥じないようにまだまだもっと頑張って、地元の人達にも誇って貰えるようなお店になれるように頑張って、恩返ししていきたい」

(……ここで筆者の脳内にプロジェクトXの主題歌が流れ始めます)
伊藤さんの言葉に頷きながらお話を伺っているだけでも胸がいっぱいで、拍手喝采、スタンディングオベーションしたいほど胸を打たれました。
いつも食べていたラーメンにそんな熱いストーリーが込められていたとは。

ちなみに、筆者がいつも食べているメニューがこちら。「獅子舞ラーメン」です。

市内各地40連で行われている氷見の獅子舞を表現した一品。
こってりと濃いめの醤油味に黒いラー油が弧を描いていて、ガツンとくる風味に獅子舞の躍動感や豪快さを感じます。

他のラーメンにも全て氷見の祭りの名前が付けられていて、例えば、氷見の祇園まつりは、荒々しく激しく賑やかな祭りだから、激しさを辛さで表現し、辛いラーメンに仕立てられています。

無形有形関係なく、見たものに衝撃を受けインスピレーションが働いて、それを表現し、想いを込めて形にする。
そうして生まれたものはもう「作品」と呼ぶに等しいですよね。筆者はそう感じます。
作品と呼ばれるものには解釈が生まれてくると思うのですが、伊藤さんが味付けや具などで表現したラーメンと、元になった祭り、イメージがその通りでまさに解釈一致です。

感動の大フィナーレのような空気感でインタビューが終わりそうな雰囲気でしたが、筆者、ここで大切な事を思い出しました。

移住者として見る氷見は如何でしょうか?
初めて氷見へ来た時の第一印象を聞いてみました。


(氷見ラーメンの店舗がある湊川周辺)

「田舎だなと思った。でも街中はコンパクトになっていて暮らしやすい。何よりもポテンシャルのある町。まだまだ可能性をたくさん秘めている」
初めてここへ来た時の印象を思い出しつつ、やはりこの土地が持つ魅力に強く心が惹かれているご様子。氷見語りが止まりません。
「チャンスも多い町で、楽しさも、隠れた魅力もまだまだたくさんあって、出し尽くせていないのではと感じるほど。応援してもらえるし、一度受け入れてもらえたら、本当に心強い人達。それこそが氷見のパワー」

ひたむきな努力と信念を貫いて、たくさんのご縁に感謝をしながら、アンチもファンに変えてしまった伊藤さんの言葉だから、説得力しかありません。

伊藤さんにお話しを伺う前、氷見ラーメンには客として何度か来たことがありました。
どことなく居心地がいい、入りやすい、あまり多くは話さないけど、店主の人柄が良いと伝わってきて、食べ終わって店を出る時に「また来よう」という気持ちになるのです。
そして何よりも、味がしっかりと濃厚でこってり系のスープでありながら、食事の後に変な胃もたれや重さが全く無く、丁寧に作られたのが分かります。
化学調味料の類を一切使わずに素材にこだわるから、味だけではなくそういった食後感にまで結果が現われているのかなと勝手に推測していましたが、地元の食材にこだわり、「氷見の名に恥じないように」と丁寧に仕事をされていると知って、大納得でした。

ご本人のモットーは、『毎日コツコツ、一生懸命』。
お客さんからの「ごちそうさま」が何よりのご褒美だと、朗らかな笑顔で語って下さいました。

氷見愛の込められた一品、是非一度味わってみてはいかがでしょうか。

 

氷見ラーメン本店

【住所】〒 935-0017 富山県 氷見市 丸の内12-7
【TEL】0766-72-1813
【営業時間】
 ■火曜〜土曜
ランチ :11:30〜14:00(LO13:30)
ディナー:18:00〜26:00(LO25:30)
■日曜
スープなくなり次第終了
【定休日】月曜日

お問い合わせ

氷見市IJU応援センター・みらいエンジン
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pin富山県氷見市中央町9-1

timeOPEN:9:30 - 18:30※水・木曜日定休

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