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2016.12.12

「ホタルの里」のつくりかた 〜移住者が地域とともにつくる風景〜

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himiijunet

 

氷見市中央部から車で10分ほど走ったところに、「ホタルの里」がある。田園風景のなかにふいに現れる幻想的な風景に心奪われ、涼やかな風と蛙の合唱が響く。

 

ここは指崎、ホタル舞う里。

 

古き良き日本の田園風景といえる景色が残るこの地区だが、実はそうした姿は一度失われかけたものだという。

 

最初の一歩は移住者の感動から

「還暦まで営業の世界でやってきて、仕事はもういいと思った。あとは田舎でのんびり暮らしたいと思って、移住先を探し始めた」

 

三品(みしな)さん夫妻が氷見市指崎に移住してきたのはおよそ8年前。
転勤族だった会社員時代に金沢で過ごしていた時期があり、北陸の風土が気に入っていたことから、移住を考えたときから北陸は有力候補だった。じっくりと検討を重ね、現在の住居を購入。リノベーションを経て理想の住まいをつくりあげた。

 

その住まいの目の前こそが、現在の「ホタルの里」だ。
しかし当時はまだ、谷筋の集落を通る一本の道でしかなかった。

 

 

氷見の魅力を、はっきりとした四季と豊かな自然がもたらす海山の幸だという三品さん。
なかでも感動したのがホタルの舞う姿だった。

 

「氷見で、生まれてはじめてホタルをみて感動した」

 

都会で過ごすことが多かったご主人の力(ちから)さんはそう語るが、当時で見られたホタルは数十匹程度だったという。ホタルといっても、もともとそこに暮らしていた住民にとっては当たり前の光景であり、時代とともに個体数は減少していく傾向にあった。
それでも三品さんの気持ちには感動の火がついていた。

 

「このままではホタルがいなくなってしまうかもしれない。この風景を守りたい」

 

そう考えて、ホタルの生態や周囲の環境にについて調べはじめる。
幸いだったのは周辺の水田で営まれていたのが減農薬による農業だったこと。おかげで少ないながらも残っていてくれたのだろう。希望がある環境だった。幼虫の餌になるカワニナが増えればホタルは増えるのではないかと考え、カワニナの育成できる池をつくった。

 

一組の移住者の素直な感動からはじまった取り組みは、周辺の住民の気持ちを動かした。
地区の協力とともに環境整備は進み、ホタルの個体数は年を追って増えていった。

 

カワニナを育てるためにつくられた池

急遽開催「ホタル鑑賞会」

筆者は幾度か三品さんのお宅に訪問していたが、今回記事の取材をお願いしようと改めて訪問のお願いをした。電話の上で話が転がって、ホタル鑑賞会兼バーベキューを催してくださることになり、仲間とともにご相伴に預かることとなった。

 

到着して、まずは庭をぐるりと案内していただく。
昼前の雨粒を残したアジサイや実をならせた梅の木が季節を感じさせてくれる。他にも、桃や林檎などの果樹、ウドやコシアブラといった山菜、山野の草花など、季節毎に違った顔をみせるように緑が植えられている。

 

 

バーベキューがはじまると、近所の猟師さんからいただいたというイノシシ肉に、釣ってきた魚、畑で取れた野菜など、氷見の自然の恵みがこれでもかとテーブルに並んだ。
豪快に鉄板に並べて、奥様お手製の梅ダレにつけていただく。どれもおいしいのはもちろんのこと、ひとつひとつの食材にエピソードがあるのが楽しい。

 

談笑しながら舌鼓を打つうち、気づけば日は落ちていた。

 

 

「よし、そろそろ明かりを消して、ホタルを見に行こうか」

 

ホタルの里の今

 

家の前の通りに出ると、ホタルはすでに現れていた。
農業用水路とその傍につくられたカワニナ生育池に沿って光の列が踊る。
見頃はもう終わりという時期であったため、数は少ないほどだというが、屋根の上まで舞い上がり星空に混じる様子は溜め息が出るほど美しい。

 

「点滅が早いのがヘイケで、長く光るのがゲンジ」

 

現在の個体数は300程まで回復しているらしい。
三品夫妻の説明をききながら、しばしその光景に魅入られる。
まちから近いところで、ヘイケボタルとゲンジボタルがこれだけの数共存している場所は珍しいという。
これが三品さんの感動の先にあった風景。
そう考えると感慨深く、移住者として縁もゆかりもない土地に根を下ろし、地道な取り組みを続けてきたその成果に頭が下がる。

 

三品さんはいう。
「こうした取り組みは地域住民の理解と協力がなければここまでにならなかった」
移住者の外からの視点がきっかけではじまった動きには違いないが、それを継続して行うには地域としての働きかけが必要だった。

 

そして、こうもいう。
「周囲に認められるには、まずはとにかく地域活動に顔を出すこと。神社のお祭、地区の清掃……、とにかく機会があれば欠かさず顔を出し、自分たちがどういう人間なのか知ってもらう努力をした」
そうした積み重ねの結果、今、指崎は「ホタルの里」になっている。

 

 

「ひとりでやったってできやしない。やっぱり仲間をつくらなければ」
ふいに出た言葉が重く響く。

 

地域のために、地域とともに。三品さんご夫妻は他にも「つるし飾り展」や「たけのこ掘りイベント」などを仕掛け、日々を忙しく過ごしてきた。
当初「のんびり田舎暮らし」を目指して移住してきたその頃の像とは違うけれど、「忙しい忙しい」と幸せそうに笑う姿が印象的だ。

 

三品ご夫妻。リビングの窓からみえる裏庭にもホタルが舞う。

 

蛍の撮影は難しく、記事の写真ではその風景を伝えることができなかった。
気になった方はぜひ実際にいって確かめてみていただきたい。
ホタルの見頃は6月上旬から下旬にかけて。「ホタルの里」ののぼり旗が目印になってくれる。

 

三品さんが運営するブログ:『みしなちからのブログ

 

文・写真:氷見市地域おこし協力隊 藤田智彦

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