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2021.06.01

クリエイターが作る、こだわりのパン -ベーカリー ごパン-

岸本乃梨子
岸本乃梨子
移住相談員

こんにちは!みらいエンジンスタッフの岸本です。

今回は、氷見の駅前、伊勢大町の『ベーカリー ごパン』さんにインタビューさせていただきました。

店主の牛房さんは、氷見市出身。県外の広告代理店で働いていましたが、味にほれ込んだ『あさひ屋ベーカリー』でパンづくりの修業をして、氷見にUターンし、パン屋を開業しました。
小麦は北海道を中心とした国産がメインで、ほとんどのパンにレーズンで起こした天然酵母を使うというこだわりぶり。
サラリーマンからパン屋への転身、地元での開業に至るまでのお話と、氷見での暮らしについてたっぷり聞いてみました!

―会社員からパン屋さんに転職したきっかけはなんだったんですか

「神奈川県にある大学を卒業して、石川県金沢市の広告代理店に就職しました。仕事は好きだったけど、本当にすごく忙しくて子供と過ごす時間も全く無かったんですよ。
24時に仕事が終わって帰宅して、朝7時には家を出るような生活がずっと続いてました。
仕事のしすぎで帯状発疹が出来て、医者に行ったらしばらく休まないとだめだよって。それでも仕事は休めない、お客さんを待たせるわけにはいかないからって仕事してたんです。
妻がひとりでずっと保育園の送り迎えをしていたので、保育士さんに片親だと思われていたくらい。これはわりと悩みでした。
まわりの上司を見ても家庭を犠牲にして仕事をしている人が多くて、僕自身、仕事はすごく好きだったけど、家族との過ごし方とか見直したときに後悔したくないなと思ったんです。家族の為にも、自分のためにも。それが一番のきっかけですね。ふと今後の将来のこと考えた時に、仕事で成功するより家族を大切にしたいと思うようになって、前職の仕事は好きだったけど、価値ある仕事をまた見つければいいかなって」

―所謂脱サラは人生の大きな決断というか、一大決心だったのではないですか?

「妻は驚いていたけど、とにかく挑戦させてくれと頼みました。でも将来的に、二人で一緒にお店をやっていけたらいいという気持ちも大きかった。
元々、モノづくりが好きだったし、無から何か生み出すことをしたくて。
たまたまそれがパンだった。すごく好きなパン屋さんとの出会いがあって、
そこに飛び込みで、「修行させてくれ!」って頼みに行ったんですよ」

―面識もなく、いきなりですか?!

「そう、面識もなく(笑)まぁ、広告代理店にずっといたから、飛び込み営業みたいなもんです。給料いらないから働かせてくれって。お店側は「給料なしには出来ないから」という事で、返事は少し待ってほしいと言われて。
前の職場も、「辞めるのはいいけど仕事しながら就活はNG」という事で、ひたすら返事を待ちました。そしたら、退職日の前日くらいに修行受け入れますという返事が来たんですよ」

―すごい強運。元々料理とかお好きだったんですか。パン屋での修行を始めた後に向いてないなと感じることなどは無かったんでしょうか?

「料理は、会社を退職して時間が出来てから初めて家でもやるようになったくらいです。パンづくりは合ってる合ってないはあるけど……そう考える余裕も無かったですね。もう後戻りできないという気持ちの方が大きかったですし。……でも、パン屋での修業期間に、前職の取引先からいくつかお声がかかったんです。ウチで働かないかって」

―それだけ牛房さんが良い仕事をしてきたって事ですね

「提示された給与の額面は大きくて魅力はありました。前の仕事は好きだったし。でも、サラリーマンを辞めたくて退職したのに戻ったら意味ない。妻を説得して仕事を辞めさせてもらったのに……って。開業という夢があったから、パン屋の仕事や修業期間もハードだったけど楽しかったです。
でも、パン作りにおいてひとつ僕の欠点があるんですけど、僕は手が遅いんですよ。これ、パン職人とっては致命傷なんです。手が遅いと商品を多く作れない。せっかくお客さんが来ても棚に商品が無いなんて事になっちゃいますから。修業していた店の店長やオーナーや先輩にもいつもそこは注意されていました。「お前は一秒を甘く見ている」って。全工程通して見たら無駄な一瞬がお前にはたくさんある、と。たかが一瞬と侮っていても、その一瞬を集めたら一日の中に時間がたくさん出来るって言われました。僕としては、ずっと必死に手を動かしているつもりなんですけどね。一生懸命やった!と思ったらあまり数が出来上がって無くて「あれ?」というような」

ーこだわりが強くて、ひとつひとつの仕事が細部まで丁寧な、クリエイター気質なのでは

「そうかも(笑)成形し終わったものを、ちょっと違うな、ここ気になるなってもういちど手直ししたりとか。でも僕はたくさん儲けたいとかいっぱい稼ぎたいっていうところが目標ではないので、今は自分の店で自分のペースで作っています」

(店内にはハード系のパンから蒸しパンまで数種類並んでいます。パン作りって、料理上手だったりパン作りに向いている人にしか出来ないものだと思っていましたが、こうして裏側を聞いてみると、試行錯誤しながらも楽しんで、真摯に、自分の欠点とも向き合いつつお仕事されているのですね。牛房さんの仕事への姿勢が伺い見えて、前職の取引先からお声がかかったエピソードにも頷けます)

―修業期間が終わり、いよいよ独立。都会ではなく、地元の氷見で開業するにあたって、不安などは無かったですか?

「石川県内や金沢市内での出店も考えたんですよ。でもまず、遅かれ早かれいつかは地元である氷見に戻るというのは考えていて。
それに、自分の根っこにあるのは決して儲けたいとかたくさん稼ぎたいという気持ちではなく、そんなにがつがつしないで自分のペースで商売をやっていけたらという事なので、人(お客さん)がたくさん集まる場所だとか、人が多い場所じゃなくてもいいかなって。それで、どうせなら地元でということで」

―地元である氷見市に戻ってきて開業してみて、実際どうですか?

「一番最初(今の店舗の前)に、氷見の島尾という場所でお店をオープンさせました。たまたま元パン屋だった物件を使わないかとお話をいただいたんですけど、氷見は自分の出身市でありながら島尾では自分の事を知っている人が誰もいないんです。「南大町(牛房さんのご実家がある町)の牛房です」と言っても誰も知らない。お店のオープンを大々的にやったから、開店してすぐはけっこう人が来てくれました。でもパンっていつでも売れ続けるという保証が無くて、なかなかしんどい時期もありました。
そういう時に、昔の友達が来てくれたんですよ。小中学校の時の同級生で、子供の頃は全然話したことない奴でも、お互い大人になってからお客さんとして来てくれたことをきっかけに話すようになったりして。それがまた嬉しいんですよね。
新しいご縁ももちろん嬉しいけど、氷見でやらなければそういう、昔不仲だった同級生と大人になってから仲良くなれるというご縁もなかった。生まれ育った氷見で、高校卒業までの18年間の知人たちに今すごく助けられている。その内、その同級生のお父さんやお母さんも来てくれたり、ウチの子のお友達の親御さんとか、店のご近所さんも最初は僕の事を知らなかったけど気にかけてくれて来てくれるようになって。今のお店の場所も実は元々パン屋さんで、2軒続いて元パン屋さんの物件に恵まれました。今の場所に移転してからも島尾でのお客さんが来てくれたりするので本当にたくさんの人のご縁に支えられてます。そういった意味でも、氷見を選んで良かったと思います。元々、海が見える場所でパンを食べられる店が作りたかったんです。それは今後の夢かな」


(現在は氷見駅近くの町中にあるごパンさん。筆者宅から近くて徒歩で行けるのでとても助かっていますが、海沿いのパン屋さんと聞いて楽しみが増えました)

―パン屋を開業して、またさらに今後の夢があるわけですね。

「そのためには、物件の条件とか、越えなければならないハードルはたくさんあるけどね。いずれそういう場所が見つかればと考えています」

牛房さんの仕事ぶりや誠実さ、芯のブレなさや、人から愛され、運を引き寄せてきたエピソードを聞いていたら、海沿いのパン屋さんという夢はそう遠くなく叶う気がしました。

いかがだったでしょうか。
牛房さんをはじめ、これまでに様々な方にインタビューしてきましたが、みなさん口を揃えて、「氷見の人のご縁に助けられている」と仰います。
どこでどんな商売を始めようと、その人自身が真摯に仕事に取り組んでいて、周りに日々感謝をしているからこそ、周りに人が集まってくるのだと感じていましたが、氷見はそれがより一層、色濃く表れるところなのかもしれませんね。

ベーカリー ごパン

【住所】
〒935-0015 富山県氷見市伊勢大町2丁目6−6
【営業時間】
7:00~17:00
【定休日】
日・月曜
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氷見市IJU応援センター・みらいエンジン
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