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2022.09.28

継業のすゝめ ー 成功事例「ボーノ・ペッシェ」を振り返りながら ー

北條 巧磨
北條 巧磨
写真家

こんにちは!ひみ暮らしサポーターズ兼TomorrowWorks.の北條です。
 
先日、移住に関する嬉しいニュースがありましたので、みなさんにも共有させてください。
 
上の写真にあるように、氷見市南大町のイタリア料理専門店「ボーノ・ペッシェ」の後継者が正式に決定しました。お店を引き継ぐのは、長野県軽井沢町にお住まいのご夫婦ということで、” 氷見市への移住をともなう店舗引き継ぎ ”が実現する形となりました。
 
またこの出来事は、地元新聞にも大きく掲載され、『継業』に対する注目度の高さを示す結果にもなりました。
 
そこで今回は、継業に興味がある方はもちろん、「けいぎょう」という言葉を初めて聞いた方にとっても学びになる内容をお届けしたいと思います。ぜひ最後までお付き合いください。
 
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【 前知識として 】
 
近ごろ、事業承継や継業という言葉を、ニュースなどでよく目にする機会が増えたと思います。
 
その背景には、地域に愛されるお店のオーナーや、伝統工芸など地域特有の職に就く方たちの高齢化が影響しています。またコロナ禍の影響によって、事業の継続または廃業への意向も変化しました。
 
昨年末に実施された「富山県中小企業事業承継アンケート調査」(調査:株式会社東京商工リサーチ)によると、富山県内の中小企業における現経営者の7.5割が65歳以上であるデータや、小規模事業者(従業員数5名以下)の約8割が廃業を検討しているというデータが示されています。また約4割が後継者未定という数字からも分かるように、後継者不足は大きな社会課題となっています。
 
氷見のしごと総合メディア「TomorrowWorks.」では、昨年10月より後継者マッチングサービス「氷見で継なぐ。」を開始して、地域の生業(なりわい)を継ぎたいと想う後継者を募集してきました。
 

TomorrowWorks.で募集してきた案件
 
サービス開始からちょうど1年が経過し、さらに初の成約に繋がった今のタイミングは、継業を知っていただくこの上ない機会だと思います。
 
ここからは、継業の概要をお伝えしながら、実際の経験や声をもとにその魅力へ迫っていきます。
 
【 継業って何? 】
 
継業とは「地域のなりわいを移住者などの第三者が継ぐこと」と定義されています。(「移住者による継業」筒井一伸・尾原浩子著より引用)
 
株式譲渡などの方法で事業を引き継ぐ事業承継と異なる点は、” 地域との関わり ”にあります。土地の人々や歴史・文化と繋がることで、引き継ぐ側のやりがいにも大きく影響を与えます。
 
継業は地域にとっても良い影響をもたらします。外から来た人の視点が入ることで、これまで埋もれていた地域資源を発見できたりと、地域経済が発展する可能性が高まります。
 
このようなwin-win(ウィンウィン)な関係性は、現代の価値観とも合っているのではないでしょうか。
 
【 継業のメリット・デメリットは? 】
 
新規出店や創業する場合、空き物件・店舗を探して、必要であれば改装して、設備や機械を用意してー、とステップを踏むのが一般的でした。そうすると、開業までの負担(時間や費用など)が大きくなってしまうケースも少なくありません。
 
一方で、継業はこれまでの経営資源を引き継ぐため、比較的短い準備期間で営業を始められるなどのメリットが存在します。
 
継業のメリットをいくつか挙げてみましょう。
 
① 比較的低リスクで開業できる。
② 無形資産も引き継ぐことができる。
③ 地域から重宝(注目)される。
 
次にデメリットも見てみましょう。
 
④ 交渉に時間がかかる可能性がある。
⑤ 負債も引き継ぐ場合がある。
⑥ 前オーナーと比較される場合がある。
 
上記の項目は一般的に言われているものです。次の章で実際の事例とともに詳しく見ていきましょう。
 
【 ボーノ・ペッシェの事例とともに 】
 

 
後継者募集記事|地元の食材にこだわり、ご夫婦で営む家庭的イタリアン料理店を引き継ぎませんか?
 
ボーノ・ペッシェは湊川沿いにお店を構えるイタリア料理専門店です。平成11年7月の開業以来、地元の食材とこだわりのオリーブオイルを使った料理は、市内外問わず多くのお客を魅了してきました。
 

 

 
オーナーである高木治美さんの「若い世代の料理人にバトンタッチしたい」という想いから公募を開始。その後、全国から計23件にもおよぶ応募・問い合わせが来ると、わずか4ヶ月でマッチングが成立しました。
 
お店を引き継ぐことになったのは、長野県軽井沢町在住の吉沢さんご夫婦です。
 

(写真左から)吉沢寿真さん、吉沢浩美さん、高木佑司さん、高木治美さん
 
引き継ぎ後、料理を担当するのは吉沢寿真さん。現在は釡焼き料理を専門にした人気店「エンボカ 軽井沢店」のシェフとして勤務しています。イタリア料理に携わった11年間は、複数のイタリアンレストランを渡り歩き、家庭料理から郷土料理、高級料理に至るまで様々な料理技術を磨いてきました。
 
吉沢さんに引き継ごうと決心した理由をお聞きすると、高木さんのお人柄と料理に対する姿勢に感銘を受けたとともに、氷見の魅力(食材・景観・人)を知って、新しい土地で夢を叶えたいと思った、と話してくださいました。
 
来年1月末には、吉沢さんによる店舗運営を開始する予定です。引き継ぎ後は、高木さんが築いてきた食文化を踏襲しつつ、ヨーロッパなどの海外滞在で得た経験も活かして、地域に根差した次世代のイタリア料理を提供していきます。
 

 
それでは、本件と照らし合わせながら、先ほど述べた継業のメリット・デメリットを再度見ていきたいと思います。
 
① 比較的低リスクで開業できる。
→ これまで丁寧に使われてきた調理機器等を引き継いだり、飲食店にとって肝となる食材の仕入先を引き継いだりと、様々な恩恵を受けられました。
 
② 無形資産を引き継ぐことができる。
→ 高木さんが築いてきた食文化やブランド力、信頼は、お金で換算しきれない財産です。
 
③ 地域から重宝(注目)される。
→ 今回実施した調印式では、複数の地元メディアからの取材がありました。氷見に流れる「挑戦する人を応援しよう」という雰囲気は、筆者自身も日々感じます。
 

 

調印式の様子
 
④ 交渉に時間がかかる可能性がある。
→ 交渉期間は案件によって様々です。ちなみに今回は、マッチングから契約まで約8ヶ月かかりました。大切なのは、引き継ぎに向けた双方のコミュニケーションかと思います。
 
⑤ 負債も引き継ぐ場合がある。
→ 案件によっては、負債を引き継ぐ場合(例:機材のローン)があります。財務面や細かい交渉事に関しては、事業承継に精通した専門家の力を借りながら、一つひとつ対処していくことをおすすめします。今回は「税理士法人 田中会計」さんが両者の間に入り、細かい調整を行なってくださいました。
 
⑥ 前オーナーと比較される場合がある。
→ 引き継ぐ側にとって、これからが本当のスタートです。自分のお客さんを獲得できるよう創意工夫を行うのが大事だと思います。新しいボーノ・ペッシェの今後が楽しみです。
 
今回は、TomorrowWorks.を入口に、様々な専門組織と連携したことで、スピーディな継業を実現できました。引き継ぐ前と後で親身なサポートを受けられるのは、氷見ならではのメリットといえるでしょう。
 
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これまで、移住する際のしごとの選択肢は、就業と創業の2つしかありませんでした。しかし、継業は、地域で働くための第3の選択肢と位置付けることができるでしょう。
 
何より氷見には、次世代の担い手を必要としている生業がまだまだ多く存在しています。
 
TomorrowWorks.では、氷見のしごとの魅力をひきつづき発信していきたいと思います。ひきつづきよろしくお願いします!
 

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