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2022.04.12

築100年以上の町家が紡ぐ新たな物語|アートギャラリー 大黒屋

北條 巧磨
北條 巧磨
写真家

こんにちは!ひみ暮らしサポーターズの北條です。
 
本日は、氷見市中央町にある築100年以上の町家からお届けします。
 

 
歴史ある建物を改装して、今年3月にオープンした「アートギャラリー 大黒屋」。そのオープンを記念して、3月6日から3月12日の間、アーティスト・黒田琴さんによる個展が開催されました。
 

 

 

アクリル画 計7点を展示
 
今回は、このギャラリーのオーナー・黒田恭子さんから、壊れかけた家を改装するに至った経緯や想い、実際にオープンしてみて抱いた感想などを伺いました。
 

 
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筆者がまず疑問に思ったのは、どうしてギャラリーを開こうと思われたかでなく、どうしてこの建物を残そうと思われたかでした。その辺りからお話を聞いてみたいと思います。
 
「長く空き家になっていたので、所々雨漏りしていたり、家の管理がとても大変でした。自分たちの生活もありますし、負担に思うことはよくありましたね。なので、何かしらのタイミングが来れば、解体して駐車場にでもしようかなと考えていました」
 

改装前
 

改装後|千本格子の外観は当時のまま
 
黒田さんのお母さんがご存命の間は家を残しておこうと思っていた矢先、昨冬の大雪の影響で、屋根の一部が崩れ落ちてしまいます。このことがきっかけで、自身が生まれ育った家と向き合うようになります。
 

雪の重さで崩れ落ちた屋根
 
「自分が実際に住んでいた時は、『人が住んでいるようには見えない』と言われたくらい、お化け屋敷みたいな家でした(笑)。特に屋根裏は、電気がないため真っ暗で、何があるのかさえ分からない状態でした。幸いにも、屋根の一部が落ちたことで光が差し、屋根裏全体を見渡せるようになりました」
 
この場所はかつて、上庄川河口にあった旧氷見漁港の近くに位置しており、大勢の漁業関係者で賑わった歴史があります。黒田さんのご先祖は、船頭を束ねる役割を担っていたそうです。そのため、初めて踏み入れた屋根裏には、漁業関連の道具や、今となっては貴重な資料が残されてありました。
 
「ここで暮らしてきた人が、本当にいたのだなと実感しましたね。自分の祖父母や曾祖父母、顔さえ分からない先代の人たちがここで頑張っていたのだなと思うと、更地にはできないと思いはじめました。考え抜いた結果、この家は壊さないと決断しました」
 
壊さないと決めた一方で、建物の改装イメージや活用方法のアイデアは、まだありませんでした。それでも、八尾在住で古民家を改装した友人のもとへ遊びに行くうちに、少しずつイメージが浮かび上がります。
 
「100年以上もこの土地に存在してきたわけですから、まずはこの建物を残すことで、地域に恩返しできたらと思うようになりましたね」
 
ギャラリーのアイデアは、もともとアート鑑賞が好きだったことや、琴さん(黒田さんの長男の妻)の存在から生まれました。
 
こうして黒田さんは、この建物をアートを通して人々が集う空間にしようと動き出します。
 

靴を脱がずに集える土間は、改装するうえで最も大事にした部分
 

建物の所々に「おわら風の盆」の意匠が施されています。「おわら好き」だった、今は亡きお母さんとの思い出が蘇ります。
 

築年数を考慮して、強度に不安がある部分は新しくしましたが、主な部材(柱・梁)や建具などは当時のまま残しました。
 
実際にオープンするまでは、氷見の人々に受け入れられるかどうか不安に思っていた黒田さん。展示を観に来てくれた人たちと会話するなかで、少しずつ自信が湧いてきたといいます。
 
「オープン以降、いろいろな年代の方が来られました。建物の佇まいや落ち着いた雰囲気を喜んでくださったり、『氷見でアートを楽しみたかった!』という声もいただきました。ほかにも、絵描き志望の学生さんが来られて、この空間を褒めてくれたのは嬉しかったですね。ギャラリーを開いて良かったと改めて感じます」
 

 
今後の「アートギャラリー 大黒屋」は、どのような展望を持たれているのでしょうか。
 
「理想としては、ハイセンス・ハイクオリティな作品を展示していきたいです。一方で、若手作家さんのお役に立ちたいという思いもあります。なので今は、作品展示をしてみたい人に向けた挑戦の場、というところに重きを置いています」
 
アーティストの視点から見る「アートギャラリー 大黒屋」は、どのような印象なのでしょうか。在廊していた琴さんからも、お話を伺いました。
 
「一般的なギャラリーは、入りにくいイメージがあると思います。でもここは、温かみが感じられます。気軽に入って来られるし、中へ入ると温かく歓迎してくれる。大人はもちろん、若い子にも受け入れられるギャラリーだと思いますね」
 

琴さんの作風は、被写体を描写して、その周辺を抽象的に描きます。
 
会期中に中央町商店街を歩いていると、通りすがりの人からギャラリーの場所を尋ねられたり、また新しい人の流れが生まれているように感じました。
 
黒田さんの想いは、生まれ育った中央町と共にあります。
 
「最近の中央町は、新しいお店が増えてきて賑やかじゃないですか。自分もその波に乗れたらいいなと思います。この場所から、自分なりの発信を続けていこうと思います」
 

 
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今回の取材を通して、新たな出会いがいくつもありました。作品との出会いはもちろん、展示を観に来られた方との出会いなどなど。それらは「アートギャラリー 大黒屋」に引き寄せられるようで、歴史ある建物が持つ不思議な力を感じました。
 
そして何より、もしこの家が壊されて更地になっていたら、これらの巡り合いは起こらなかったでしょう。
 
アート作品だけでない、素敵な出会いが待っている「アートギャラリー 大黒屋」へ、みなさんも訪れてみてはいかがでしょうか?
 
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<店舗情報>
アートギャラリー 大黒屋
場所:富山県氷見市中央町14-10
メール:daikokuya2022@gmail.com
SNS:InstgramFacebook

お問い合わせ

氷見市IJU応援センター・みらいエンジン
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