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2022.09.05

居心地のいい空間で、自由に過ごす|廃校活用

fws.staff
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ふるさとワーホリスタッフ

かつて子どもがたくさん生まれた時代。必要に駆られて増えた学校も、子どもが大人になるのと同様に年月を重ねた。使う人が少なくなっても、居なくなっても、時計の針は休まない。
「要らないなら壊してしまえば?」と言っても、費用はかかる。
それに、その全ては誰かにとっての大切な場所だ。

ワーホリ生の私が初日に案内してもらった場所の一つが、久目地区交流館。
私はここが旧小学校であることを、その外観からすぐに理解した。
つまり、廃校活用だ。しかし館内は、廃校のイメージとは異なっていた。
居心地が良くて、楽しそうで、清潔。
特に細かなデザインはハイセンスだった。一体誰が廃校をここまで…?

廃校は、年々増えている。
2014年、耐震性や津波浸水の危険性に伴い、旧氷見市庁舎が移転された。
その先は、旧有磯高校の校舎と体育館。
新築するよりも安く、校舎特有の広さや立地の良さも活用できた。
わかりやすい成功は、当時大変話題になったという。
このように現実的な利点も多いのが廃校活用だ。

当記事では、氷見市の二つの実例を見ながら廃校活用について考える。

① 久目地区交流館 旧久目小学校
存分に旧校舎を利用した交流館は、夏休みの小学校そのものだ。
ここでは、図書室兼ラウンジ,空き教室,体育館,職員室などのあらゆる部屋を自由に使うことができる。

館内に足を踏み入れてまず驚くのが、洗練されたデザインである。
とにかく、田舎の小学校のはずが、垢抜けている。脳が「居心地がいい」と判断したのか、顔や肩の力が抜けるのを感じた。

入り口から入ってすぐ、予定表が目に入った。
木材でできたおしゃれなマグネットには「ウクレレ教室」「100歳体操」など、催しの名前が書かれている。
「さんさん塾」では、ボランティアの先生が中高生に勉強を教えたり、宿題をしたりする。高校がバラバラになっても、ここに来れば会える。それが交流館のいいところ。
俳句教室「いきいきサロン575」は、教室を使いたいという要望のもと開かれている。交流館主催のイベントもあれば、地域の人が自由に発案することも可能だ。

そんな久目地区交流館のデザインをされている、伊藤野々香さんにお話を伺った。

誰でも気軽にあそびに来れる場所
あらゆる人にこの場所で交流してほしいと言うコンセプトのもと、空間づくりをされていると言う。年齢を問わず、誰でも。

特に、小さな子どもでも楽しめるように工夫されているのが図書室兼ラウンジである。小さな子どもの目線に合わせて、本棚の下の方に児童書を配置している。このような本の並べ方や、より人を惹きつける配置は、氷見図書館の司書に教えてもらうなどの工夫によるものだ。

全ての本は借りることができる。オリジナル貸し出しカードはこんなにも可愛い。暖かみのある色合いとデザインだ。本の名前を書いている子どもを想像すると…なんて愛らしいのだろう。
もちろん、大人ものんびりできる。レコードやボードゲームもあって、十分楽しめそうだ。

こだわりのデザイン
木の小物が目立つ館内。親しみやすさを感じて欲しいという思いが込められている。例えばこのプレート。伊藤さんご本人が、はんだごてを使って木材に字を書いた。


空間によく馴染むこのプレートは、おしゃれで垢抜けた交流館を形作る重要なパーツだ。材質一つをとっても、作り手の意図やこだわりを感じる。

旧小学校に入れるって聞いたのですが…?
大人になってから、子どもがいない限り小学校に行く用事もないだろう。
廃校を利用したイベントと聞くと、
「旧小学校なんだ、興味あるかも」と心躍らせる大人は多いようだ。

旧小学校に入ってみたいという興味が、イベントへの関心に繋がることもある。
また、開催場所を「旧久目小学校」と書くことで、「ああ小学校のところね」とわかってもらえるのも嬉しい。

子どもの賑やかな声が聞こえる。そんな時、伊藤さんは嬉しくなるという。
《旧小学校を遊びつくせ!》伊藤さんが運営する交流館の公式Instagramにある言葉だ。
久目地区交流館は「誰でも気軽にあそびに来れる場所」を信念にデザインされている、旧小学校だ。

② 氷見ラボ水族館 旧氷見市仏生寺小学校
この庭は小学校のそれだ。朝顔を育てる小学生が目に浮かぶ。

館内に足を踏み入れるとすぐ、水槽が見えた。
頭では「なんの魚だろう?」と考えながら、せっせと靴を下駄箱に入れた。
ここは昇降口か。水族館と学校が混ざりきっていない妙な感覚が、互いの魅力を引き出しあっている事に気が付く。

私は水槽に目線が来るように腰を折り曲げ、泳ぎ回る魚の顔を観察した。顔を上げると、目に留まったのは魚の絵。水槽の上に絵が描いてあった。


ペンで縁取られた魚に、色鉛筆で繊細に色が乗せられているのが分かる。鮮やかなヒレが生き生きとしている。
かつて魚の解説を全部見たことがあったかな。ここでは自然と読む気になった。
まるで理科の授業みたいだ。

館内をぐるっと見ると、特別にブースが設けられている魚がいることに気が付く。
イタセンパラ、聞いたことのない名前だった。実は、絶滅危惧種ⅠAに分類されている。

氷見”ラボ”水族館は、富山大学理学部と氷見市の連携協力に関する協定のもと、連携研究室として活動をしている。
これが”ラボ”の部分であり、廃校活用施設と並ぶ大きな特徴でもある。

この魚を守りたい、この魚のことを伝えたいという気持ちが伝わってきた。私はそれに応えるようにじっと魚を見た。
ここには、可愛らしい雰囲気に紛れて驚くべき専門性の高さを持つ研究発表がいくつもあった。「ご自由にお取りください」と置かれている論文と、雰囲気とのギャップ。そのアンバランスさにツッコミを入れるのも楽しい。
もちろん、イタセンパラの知識を求めているというのなら、それに応えてくれる水族館だ。

薄暗くて無機質な都会の水族館はスタイリッシュで、多くの人を集める。
それに比べ氷見ラボ水族館は、
大きな窓からたくさん日差しが入る、表情豊かな水族館だ。
日曜日ということもあってか、親子連れが何組かいた。
ザリガニ釣りは、子どもに大人気だ。
廃校になった後も、子どもたちの楽しそうな声が響いている。

《廃校を活動拠点へ》
久目地区交流館と氷見ラボ水族館にとって、廃校は終わりではなく、始まりだ。
廃校の辿る先に、子どもを含めた地域の人々の賑やかな声が似合うなんて。

氷見には、廃校を人々の活動拠点へと刷新するため、努力している人がいる。
目指すのは、誰でも気軽にあそびに来れる場所。
二つの施設はどちらも無料の遊び場だ。

黒板アートコンテストやフリーマーケットなどが開催された「くめアートデイ」には、高校生からお年寄りまで300人以上も集まった。
周りに田んぼしかないここに、300人も?私は心底驚いて、この場所が本当に交流館であることを知った。
廃校を遊び場に変える前向きさとクリエイティブさは、人々に活気を与えている。

休みの日こそ、活気溢れる廃校へ出かけてみる。空き教室に集まって、映画を見てみる。水族館で、おさかなクイズをしてみる。

住む人にとって、地域の交流やその雰囲気は大切だ。
居心地のいい空間で、自由に過ごす。氷見で実現できることの一つである。

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氷見市IJU応援センター・みらいエンジン
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