※こちらの記事は「ひみ知っ得ナビ」からの転載記事です。
富山県の北西部に位置し、豊かな漁場と美しい里山風景が広がる氷見市。そんな氷見市に移住して5年目を迎えるアミさんに取材しました。
結婚を機に、慣れない土地、3世代同居、そして子育てや主婦という新しい役割に戸惑いながら始まった彼女の移住。
当初は不安もあったという移住生活の中で、「氷見は自分がプレイヤーになって初めて面白い」と、そう語る彼女が見つけた新しい自分と、それに気づかせてくれた氷見という場所が持つ魅力について、伺いました。
暮らしてみて感じた、リアルな氷見
結婚をきっかけに、氷見に移住。その時の心境はどうでしたか?
夫の地元である氷見市で暮らすことになり、正直「ええー!?」って、不安もありました(笑)。
でも、氷見は獅子舞の文化がとても盛んで、地域総出で一晩中、家をまわるんですよ。嫁いだ家には「嫁花(よめばな)」といって、玄関先で獅子が盛大に舞い、大きな目録をみんなで読み上げて祝ってくれるんです。それが新鮮で、やっぱり嬉しかったですね。
実際に暮らし始めていかがでしたか?
実際に住むと、やっぱり大変なこともありました。住まいが昔ながらのでっかい黒瓦屋根のお家で、田んぼが一面に広がる里山も近い場所だから、普通にムカデとか虫がいっぱいでるんです(笑)。
3世代同居で、90歳を超えるひいおばあちゃんが「だしかん」という言葉をつかっていて「どうにもならない」といった意味の方言らしいのですが、そういった言葉の微妙な違いに戸惑うこともありました。
「心の散らかり」と、海辺のゴミ拾い。氷見で見つけた、ありのままの自分
環境が大きく変わる中で、どんな変化がありましたか?
当時は35歳を前にして、「ちゃんと就職した方がいいんじゃないか」「正社員にならないと」みたいな思いが強くて、安定した仕事の募集を受けたりもしたんです。でも、氷見の自然に囲まれ、のんびりした環境の中で、自分は本当は何がしたいんだろうって向き合うようになって。
そんなある日、ふっと海に行ったら、砂浜に漂着ゴミがいっぱいあって。それがまるで当時の自分の心境を現わしてる気がして、リンクしたんです。
それで「この海のゴミを拾いたい!」って、そこからいろいろスタートしていくことになりました。
――慣れない土地での暮らしに戸惑い、心のバランスを崩しかけていたアミさんの目に映った、美しいはずの海岸に打ち上げられた漂着ゴミの光景。そんな自分の心のように散らかったゴミをみて、アミさんは拾おうと一歩踏み出します。忘れかけていた本当の自分の気持ちを拾うように。
そんな彼女の小さな一歩は、後に社会課題をテーマにした「エシカル」な活動へと繋がっていきます。
氷見から発信する「エシカル」。氷見の“当たり前”の豊かさを次世代に繋いでいきたい
その気づきが、現在経営されているエシカルショップや、大人の英語教室に繋がっていったのですね。
幼い頃は、自営業の父を見て自分もやってみたいとか言っていたのに、大人になるにつれて、「私には無理だ」って諦めるようになっていました。でも、移住で人生がリセットされたような気持ちになれて、しがらみも何もない、好きなことに向かってやってみるんだったら、この人生のタイミングしかないなって思えたんです。
面白いことに、氷見の人に「エシカル」と言っても「そんな横文字はよく分からん」って感じです(笑)。でも、地元で採れた野菜や魚を食べ、家族と過ごし、自然と共に生きる、そんな氷見の暮らしそのものが、図らずもエシカルなんですよ。
都会は害を感じることが多いから、無農薬やノンケミカル、ヴィーガン系の商品など、人工的なもので守ることが増えてきているけれど、氷見は日常がエシカルで、それを必要とすることがないくらい豊かで恵まれている。世界中で失われつつあるようなものが、ここにはぎゅっと詰まっている。それが氷見の魅力だなって思うんです。
大人向けに英語教室を開いているのも、子どもたちに「あとはよろしく」と未来を丸投げするのではなく、私たち大人が楽しんで挑戦する背中を見せて繋いでいきたいからなんです。
これから氷見を拠点にエシカルな事業を外の世界に発信していくことが、私の目標です。
面白がって応援してくれる、家族のようなコミュニティに支えられて
氷見に来てよかった、と思うのはどんな時ですか?
氷見にきてからの自分が、移住前よりも好きですね。以前の自分は、アイディアもただの雑談として終わっていたけれど、氷見に来て、1つずつ気持ちを拾って自己を発見していくように、進んでいけたんです。
小さな市だからこそ、何かを始めたり挑戦する人を「やってみられま」って、面白がってくれる気がするんです。行政や地域の人、いろんな人との距離が近くて、ポジティブに繋がっていけるんですよね。
それは、辿っていけばみんな「氷見に暮らすご近所さん」だから。私を「起業した主婦の1人」ではなく、「あの地域に住んでいて、こんな暮らしをしているあの人」として、温かく接してくれるんです。その関係性が四角四面ではなく、とても人らしい付き合いに感じられて。私のやりたいことや挑戦していることを地域のみんなが知ってくれていて、それとなく応援してくれている。それが、すごく安心できるんです。
氷見の暮らしの中で、特にお気に入りの場所はありますか?
私がよく行く場所は「総湯(そうゆ)」です。氷見は温泉が豊かで、泉質が違う民宿がいっぱいあるんですよ。氷見に移住してからは、家族で出かけると帰りに温泉に寄るのが我が家の定番スタイルです。
でも私が一番好きなのは、総湯は単なるお風呂屋さんじゃなくて、地域のコミュニティスポットだというところ。普段は話さない世代間の交流ができたり、イベントのチラシやポスターが置いてあって、地域の情報交換の場でもあるんです。
能登半島地震の時も、露天風呂で話したおばあちゃんの顔が真っ先に浮かんで。能登から来ていたそのおばあちゃんのことを家族みたいに心配している自分がいて、そんな繋がりを感じられる総湯は氷見の暮らしの魅力の1つだなって思っています。
移住を考えるあなたへ。「自分がプレイヤーになれば氷見は最高のフィールド」
最後に、氷見への移住を考えている方へメッセージをお願いします。
氷見は、自分が「参加型」になること。習い事の1つでもいいから、地域を知ろうと自分がプレイヤーになって入っていくことが大事ですね。移住前と同じ楽しみ方をしようとするのではなく、氷見での繋がりや文化を知って、自分がその中でどうやっていこうかなと考えた時に、氷見ほど面白いフィールドはないかなと思います。
取材を終えて
氷見の自然に囲まれて過ごすうちに、自分も自然体になれたアミさん。
きっとそうなれたのは、家族のように見守ってくれる地域に支えられているから。
氷見に来て一歩踏み出したら、自分でも気づいていない自分らしさに出会えるかも、そう思える取材でした。
アミさん、ありがとうございました。
WRITERこの記事の投稿者
萩野富美子(ハギトミ)
氷見で働く人の大切にしているこだわりや想いを届けたい。気軽に、気楽によめる文章を心がけています。