【はじめに】
こんにちは。ふるさとワーキングホリデースタッフの松本望実です。
今回は、「氷見の木材」をテーマに取り上げたいと思います。
興味を持ったきっかけは、中央町商店街にあるパン屋さん「考えるパンKOPPE」さん。商店街を歩いている際に、明るい色の木材を使った外観のこのお店に目を惹かれました。
実は、この木材は氷見で採れたスギの木。そして地元の会社「岸田木材」さんが関わっている、と「みらいエンジン」の藤田さんに教えて頂きました。
私は元々木材が使われた建物や家具が好きだったため、「木材」というテーマで記事を書くことに決めました。商店街の方のお話を伺ったり、岸田木材さんの工場を見学させて頂いたりする中で、木材と氷見のまちがどのように繋がっているのかを知ることができました。
少し長いですが、氷見の木々たちを想像しながら読んでみてください!
①商店街を彩る氷見の木材…考えるパンKOPPE・Himi Brico Labo
あたたかい外観が目を惹く「考えるパンKOPPE」さん
まず、「氷見の木材」と中央町商店街との繋がりをご紹介します。
記事の初めにも触れましたが、商店街にある「考えるパンKOPPE」さんでは、外装だけでなく内装にもふんだんに木材が使われているのが特徴的です。木材の風合いと手作りのパンとはとても相性が良く、パンがより美味しそうに感じられます…!
木製のカウンターには美味しそうなパンがずらり
店先の100円均一ボックス
そして店先には100円均一で木材を売るコーナーが。KOPPEさんは商店街の「防災共同ビル」を改装してつくられた職住一体型のお店。表の店舗と奥の住宅を改装する際に、地元の木材会社「岸田木材」さんに依頼したことがきっかけで、店頭での木材販売を始めたそうです。
「ここでの反響が良く、向かいの『Himi Brico Labo』の立ち上げにつながりました。」
商店街に住む竹添さんからそう伺いました。
パチンコ屋さんに木材が…!?
同じ商店街にある「Himi Brico Labo」さんでは、木製品や木材のアウトレット品などを買うことができます。元パチンコ店を利用したという外観は一見レトロな感じですが、店内には大小様々な木材がたくさん。見ていると自分でD I Yをして何か作りたくなってきました。
この場所も、やはり運営するのは岸田木材さん。中央町商店街に深く関わっていることが分かりました。どのような会社なのか一層気になりますね。
端材から小物まで、様々な木製品が並ぶ
②氷見の木と共に暮らす…氷見移住ヴィレッジ
黒瓦の屋根が氷見らしい外観
次に、「氷見の木材」が使われた住宅についてご紹介します。
滞在中に、窪地区にある移住体験施設「氷見移住・定住促進住宅」で、実際に住まれているご夫妻にお話を伺う機会がありました。ここでは、氷見のスギ材を用いた木造住宅での暮らしを一定期間体験できます。奥さんのご実家が氷見にあり、氷見を気に入ったご主人と移住を考えているとのことでした。
窓枠や天井材にもスギが使われている
ありがたいことに、今回は住宅の中にも入らせて頂きました。玄関を開けた途端にスギの良い香りが広がり、落ち着いた気分になります。窓枠やドアなどの建具にも木材が使われており、木の持つあたたかさを感じながら暮らすことができそうです。間取りはコンパクトですが、お二人は平家の1階建てで生活のしやすいこの家を気に入っているそうです。
ご夫婦はお仕事の都合上、元々住んでいた東京へ帰られることが多いそうです。お話を伺う中で印象的だったのは、奥さんの
「東京で鞄を開けると、木の匂いを持ち帰った気分を味わえる」
という言葉。材の持つ香りと共に生活できるのは、木造住宅だからこそではないでしょうか。
天井から光が差し込む廊下
お二人が移住生活の体験を始められてから約一年。
「もう少しでここでの居住が終わってしまうのが惜しい。氷見の魅力は食べ物が新鮮で美味しいことや、海や土の匂いを味わえること。本格的に移住できたら、お店を開いて商店街や氷見の街をより明るくしたい。」
短期間ですが氷見で過ごしている身として、お二人の言葉には共感する部分が多くありました。そしてその暮らしを包んでいる氷見の木材の魅力を、さらに感じられた日となりました。
明るく開放的な窓
③「山」の価値を最大限に活かす製材所…岸田木材
大量の木材が積まれている様子
これまでに取り上げた様々な事例に関わっていた製材会社「岸田木材」さん。氷見にあるその工場を見学させて頂きました。
工場の敷地の中には、加工前の丸太状のものから、加工後の板状のものまで、大小様々な木材がありました。中には直径50cmほどのものも。加工前の材の長さは基本4mだそうで、そのスケールの大きさと量の多さに驚きました。
20年前まで海外産の材を加工していましたが、関税の高さなどを理由に国産材に転換。その後「ひみ里山杉」という名称でブランド化されたそうです。
加工後の木材
「ひみ里山杉」はどのような特徴を持つのでしょうか。
「『ひみ里山杉』は『ボカ杉』という種類の杉で、初期の成長が早いのが特徴。柔らかく、薬剤が染み込みやすいため、昔は電柱や船の材としても用いられていました。」
工場を案内してくださった岸田真志さんに伺ったところ、そのような答えが返ってきました。年輪を見たときに、中心部の間隔が広い(=成長が早い)ものが目印だそうです。氷見の杉に、成長速度が早いという特徴があることは知りませんでした。
さらに、この樹種は優良母樹の枝を用いて「挿し木」という手法で育てます。良い木がいわばクローンのように増えるため、品質が均一になるそうです。
事務所の模様替えに使うパーテーションが、工場で手作りされていました…!!
また、記事の前半で取り上げた中央町商店街のお店「Himi Brico Labo」についても伺ってみました。このお店の賃料はなんと1万円。
「木材は丸いものを四角く加工する材なので、どうしても規格から外れるものが多い。でも一般の人が日常的に使う分には問題ない。このお店を1万円で開いて、シャッター通りに灯りを灯すことができて良かった。」
「ひみ里山杉」を通じて、山とまちを繋ぐ仕組みの構築をされている岸田さん。今後について尋ねると、「商品は良くて当たり前だけど、これからは木材の『使い方』や情報の『伝え方』で勝負したい」とおっしゃっていました。最近は杉の皮を用いたインクなど、画期的な商品を発売されています。
山というフィールドを使いこなし、山の価値を最大化したい、という熱いに触れることができた貴重な機会でした。
インタビューさせて頂いた岸田真志さん。ありがとうございました!
【最後に】
「ひみの森作り2022」の様子
岸田木材さんの工場に伺った翌日に、「ひみの森づくり塾2022」というセミナーに参加してきました。氷見市における森林活用の歴史から、森林を取り巻く現在の環境、そして今後の林業についてなど、様々な角度からお話を聞くことができました。
私が驚いたのは、スギを用いた材は弥生時代から氷見で使われていたこと。奈良時代からは木造和船にも用いられたようで、木材とまちだけでなく、海との繋がりもあったと知ることができました。
「富山県美術館」内装材にも、「ひみ里山杉」が使われていることを知りました。
現在、スギは氷見の森林面積の65%以上を占めています。しかし、人手不足や高齢化に伴って、荒廃している森林も増えているそうです。
岸田木材の岸田さんは、工場に伺った際に「木は多くの人が好きな材だが、知られていないことが多い」とおっしゃっていました。そんな中、KOPPEさんやBrico Laboさんのようなお店で木材を扱うことは、地元の木材について興味を持つきっかけになるのかもしれません。氷見に住む人だけでなく、私のような他所から来た人にも「ひみ里山杉」の価値が伝わってほしいなと思います。
「山とまちを繋ぐ仕組み」が徐々に構築されている氷見を、滞在中に新しく見つけることができました。