とにかく広い、氷見の住宅
富山県内の田園地帯や、山間部に建っている住宅の多くは、県外から来た方を驚かせるほど広いです。そのなかでも、築50以上の古民家の多くは、200坪(約660㎡)以上ある敷地に、60坪(約200㎡)以上の堂々たる大きさです。さらに、敷地内には、土蔵造りの倉庫や作業小屋が建っている場合も多く、ひと家族が暮らすには、持て余してしまう広さです。
※実際に空き家情報バンクにて家賃5万円で登録された物件
氷見市も例外なく、現代住宅、古民家を問わず、とにかく広いです。比較的小さいとされる町家住宅であっても、大都市圏と比べると、考えられないほどの部屋数があったりします。それでいて、賃貸ならば、都会のワンルームよりもはるかに安い賃料で、一軒家を借りられたりもします。例えば、氷見の中心市街地にある物件でも、4~7LDKで庭付きで家賃4万円、などという物件もあります。ちょっと郊外に行けば10LDK、山間部であればそれ以上に広大な物件がありますが、通勤や買い物には不便であるという理由などから、5万円程度の家賃で借りれる物件もあります。
漁師町風情のある沿岸地区の町家
一方で、漁業とともに発展してきた歴史的背景を持つ沿岸の市街地には、かつての人口密度を思わせるように、建物間口の狭い町家が、隣との隙間なくびっしりと密集して建っており、北陸沿岸ならではの漁師町風情を感じる町並みを形成しています。
先ほどの「間口が狭い」という表現が「狭いお家」と誤解されてはいけませんから、補足説明をいたします。下の図面は、沿岸の市街地でよく見かけるタイプ(カタチや大きさ)の町家です。この町家は、築80年くらい経っており、道路に面した建物の間口が2間(約3.6m)です。ちなみに、畳の長い辺が1間=約1.8mです。
1階の玄関を入ると、左手にはミセと呼ばれる、格子窓のある小さな部屋があります。その奥に向かって、オエ、ツギノマ、そして中庭のある台所へと続きます。ツギノマには、仏壇が置かれる場合が多く、ここだけ観音開きの襖になっています。どんなに狭い中庭でも、窓の少ない町家の場合は、重要な明かりとり、そして風を通す通路として必要です。
1階と2階を合わせると、部屋の数は7つ。台所と広い納戸、中庭まで付いてきます。この間取りの物件が、例えば、東京の下町にあったとすれば、果たして家賃はいくらになるでしょうか。
町家暮らしで心配になるのは、駐車場が敷地内にないことです。これは、郊外の新興住宅地に新築の家を建てて移り住み、代わりに中心市街地の町家がどんどん空き家になっていく、という状況を作り出している一因にもなっています。しかし、市街地にはそれなりの数の賃貸駐車場があります。車の便利さを知ってしまうと、徒歩5分の距離にあるコンビニに行くのも車を利用してしまうという話をよく聞きます。都市部で暮らしている皆さんであれば、徒歩5~10分離れた場所にある駐車場をどう考えるでしょうか。ここさえクリアできれば、町家暮らしは快適で楽しいものです。ご近所との距離が近い分、コミュニティのなかで暮らしていることを実感しやすいと思います。
住宅にかかるコスト(維持費・購入費・駐車場)の詳細は、「「生活費」の(4)家にかかるお金」を参照ください。
氷見に住めば、古民家暮らしも夢じゃない
氷見市内には、築50年を超える、いわゆる「古民家」と言われる伝統的な木造建築が多く残っています。古いものでは、築100年を超え、中心市街地には「町家」、山間部では「アズマダチ」と、異なるスタイルの物件と出会うことができます。
町家とは
「町家(町屋とも表記)」とは、職人や商人など、町人の住まいとして江戸時代以降に発展していった伝統的な民家のことです。1つの屋根の下に、いくつもの世帯が暮らしている「長屋」とは異なる意味で言われます。通りに面した窓には細かい格子戸がはめ込まれていて、昼間の明るいうちは、建物の中の様子が見えにくくなります。逆に建物の中から見ると、格子越しに外の様子がよく見える、という仕掛けになっています。
現存する町家の多くは、現代の生活様式にあわせてリフォームされているため、建築された当時の間取りとは異なっています。かつては、正面玄関を入ると、すぐに土間が広がっており、建物の奥に向かって、幅半間(約90cm)ほどの細長い通り土間が続いているのが一般的でした。その通り土間と平行して、畳の間が、同じく奥へ奥へと連なります。
氷見の場合、海沿いに建てられた町家の多くは、漁師や網元が暮らした場所で、まちの表通りから、仕事をする海側に面した出入り口まで、通り土間でつながっていた様子が、数少ない建築当時の姿に近い町家から、うかがい知ることができます。
氷見の町家。 一人で住むにはちょっと贅沢!?
山間部の大きな家
山間部でよく見かける大きな家の代表格が「アズマダチ」です。「アズマ=東」は、日当たりのことを考えて、家が東向きに建てられてことから、そのように呼ばれるそうです。なんと言っても、切妻(屋根瓦が見えない面)から見る堂々たる大屋根が特徴的。ちょうど本を真ん中で開いて伏せたような形の屋根の下に、縦方向の束(つか)と、横方向の貫(ぬき)という天然木の部材が、白壁のキャンバスの上で規則正しく組まれている様子を見ることができます。
伝統的な木造建築に興味がある方でしたら、世界遺産に登録されている白川郷・五箇山の合掌造り集落をご存知でしょうか。この建築に深く関わったのが、江戸時代に繁栄した氷見の大窪大工という匠の集団です。能登地方と飛騨地方の文化や伝統技術の架け橋になったとも言われており、その高い技術力により、この地域一帯には、丈夫で質の高い伝統建築が多く残されています。
しかし残念なことに、このような立派な古民家が住み手を失い、年々、空き家が増えています。誰も使わなくなって数年経った家の多くは、あっという間に痛んでしまい、すぐに住めない建物になってしまいます。これが「空き家はたくさんあるが、住める家がない」という現象を生み出しています。近年、都会から地方へ移り住み、古い空き家を譲り受けてセルフビルドしたり、好きな使い方ができるようリノベーションしたりと、若い世代の移住者を中心に、古民家で暮らすという憧れが強くなっている傾向があります。
いつかは、こんな古民家に住んでみたい…。
すぐに住めない物件は、通常の不動産取引では、なかなか扱われないという事情があります。ところが「古民家」と言われる、築50年以上の伝統的な木造建築を求める人々は確実にいるのです。これが、氷見での今後の課題となります。
いつか古民家に住みたい。その夢は、きっと叶えることができます。現状では、そのままの状態で、すぐに住める古民家の空き家は、そう多くありません。でも、大丈夫です。まずは、すぐに住める適度な広さと環境を備えた賃貸物件を探して住み、そこを拠点に、色々なご縁を広げていると、近い将来、あなたが好きになった地区で、あなた好みの古民家が見つかるはずです。
日本の伝統建築のコンセプトは、夏場を涼しく過ごすことです。ですから、冬の寒さはある種の宿命と言えます。昔はストーブも、エアコンもない代わりに、囲炉裏や釜など、屋内で火を焚き、その熱で暖を取っていました。土のままの土間は、微量な地熱を感じ、今のコンクリートの土間よりも多少は暖かかったはずです。暖かい空気が巡る2階部分は比較的寒さも穏やかですが、それでも、寒冷地の氷見で広大な古民家に住むには、それなりの覚悟と対策が必要になってきます。しかし、それをも乗り越えようと思える魅力が古民家にあるのも事実です。
灯油ヒーター、ストーブは必須
繰り返しになりますが、氷見の家は伝統的な日本家屋が多く、しかも部屋がいくつもあるような広大な住宅も珍しくありません。そのため、冬の室内の寒さは身に沁みます。
その対策としては、室内の空気全体を温めるエアコンよりも、即座に温かい風が出る灯油ヒーターや、大きめの灯油ストーブの方が効果的です。冬に引っ越しを考えている方は、早めに手配することをおすすめします。
あわせて、灯油のポリタンクもホームセンターなどで購入しておきましょう。ポリタンクから、ヒーターやストーブのタンクに給油するときは、手動もしくは自動のポンプ給油機が必要です。電動の給油機のなかには、自動停止装置がついているものもあり、便利でおすすめです。値段は1,500円〜2,000円程度です。
家庭用灯油使用量 平成16年度調査(財団法人 日本エネルギー経済研究所 石油情報センター)
空き家情報バンク
みらいエンジンでは、この情報バンクに登録する空き家を探しています。所有者ご本人様もしくは、そのご家族からの相談を承っておりますので、登録する、しないに関わらず、空き家に関する様々なことについて、お気軽にお問合せください。きっと、何かのお力になれると思います。
また、空き家をお探しの方からのご連絡もお待ちしております。建物の劣化が激しい場合や、一般的な市場ニーズには合わないような空き家についての相談も、少なからずあります。私ども、一切の仲介行為が行えないため、所有者と希望者との紹介のみとなりますが、何かのお役に立てると思います。