氷見の町中には味自慢の居酒屋が点在しています。
氷見のお店は閉まるのがやや早めなので、20時にもなると商店街はシャッターが目立ちます。が、21時22時ごろになると、飲み屋帰りで上機嫌な人達が夜間灯に照らされながら歩く姿をちらほら見かけます。
漁港のある町というだけあって、海鮮系や和食メニューをメインに掲げているお店が多いですが、今回ご紹介する「Wine & Izakaya シャノワール」さんは、氷見で一軒だけのワインバーです。
店内に入ると、カウンターが6席とボックス席があります。
白と黒を基調としたモダンな内装に差し色の赤が映える、隠れ家的な雰囲気の店内。
ソムリエ資格を持つ マスターが、お客さんの好みや予算に合わせて料理やドリンクを提案してくれます。
筆者もお酒を飲みに何度も来た事がありますが、カクテルで乾杯する若い女の子同士の賑やかなグループや、ビールジョッキを片手に笑い声を上げるサラリーマンの飲み会から、静かにワインを楽しむお一人様まで。客層も飲み方や楽しみ方も偏ることなく様々といった雰囲気のお店です。でも、共通しているのは、お客さんみんなとってもリラックスしていて楽しそう!
こちらがマスターの中路さん。
中路さんは名古屋からの移住者さんです。
氷見への印象や、お仕事の事など、お話を伺ってみました!
■名古屋から氷見に来たきっかけを教えてください
結婚がきっかけで氷見に来ました。嫁さんと名古屋で出会って、結婚して富山に移住。しばらくして嫁さんの地元の氷見に来ました。
富山の女性は気が強いと言われているけど、芯が強くてしっかりしていて、優しいと思う。特に氷見の女性にそう思いますね。悪く言えばおせっかいだけど、何かと助けてくれる人が多い。
■結婚、名古屋から富山への移住、転職。人生の大きな決断が3つ重なったんですね。名古屋という大きな都市から氷見市に来ることになって、どんな気持ちでしたか?
あの頃は、正直、天狗になってたと思う(笑)
「人間その気になればどこでもやっていけるやろ!」なんて思っていて。場所なんて関係なく、漠然と「やれる」「出来る」って気持ちしかなかった。
■上手くいくイメージだけを強く持っていたんですね
名古屋にいた時もレストランバーでずっと長く働いていたから、富山に来てからもそういう仕事をするつもりで求人情報を探しました。シャンパンバー、会員制のイタリアンバー、レストラン、色々な職場を経験しました。職場によって様々だけど、向上心が強くて勉強しあえるような仲間と出会えたりしたし、何よりもみんな優しかった。
■富山市で経験を積んだあと、富山市で開業ではなく、氷見でお店を開いたのはなぜですか?
氷見のとあるお店、とある方との出会いが転機でした。
「サボテン」というお店のオーナーさんなんだけど、一番最初に氷見来た時に飲み屋を探してて、見つけたのがそこだった。
お店に一歩入って、良い雰囲気だなと思って、それ以来、氷見に来ると毎回サボテン。常連とまではいかないけど、オーナーさんとも顔なじみになっていって。
その内、氷見に住むことになった時に、「氷見のバーや飲み屋でどこか良い働き口はないか」って相談したんです。そしたらなんと次の日にオーナーさんから電話がかかってきた。
「私と働かないか」って。
「アンタみたいな男もったいないから店やらした方がいい」って言ってくれて。
■オーナーの方、すごいですね!先見の明があるというか、お客さんとして接しながらしっかり見抜いていらっしゃるとは。
懐の広い方なんですよ。氷見はそういう人が多い気がする。
そんなわけで「サボテン」二号店の店長に就任となりました。
サボテン二号店の店長として3年やって、独立。独立してから6年だから、氷見で9年間やってきたことになりますね。
■氷見で9年間。その間に氷見への印象の変化はありましたか?
印象の変化は特にないかな。氷見の良さは、人と人との距離感の近いところ。例えば、スーパーで見かけたり町中で会うとみんな声をかけてくれるんですよね。
裏表がなくて、素直で、建前があまり無いというか、みんな本音で話したり接してくれる。好き嫌いがはっきりしているから、つき合いやすいし、しゃべりやすい。そういう印象はずっと変わらずあります。
■それはマスターが良い意味で建前なくお客さんと接するから、相手もリラックスしてお店で過ごせるのだと思いますよ。実際、何度も客としてお店に来た事ありますが、お店の中やお客さん同士の雰囲気がとても良いんです。
自分が氷見の人も土地柄も好きだからそうなるのかもね。
このお店は、自分がお金を儲けたいとか、お酒の商売をやりたいというところからではなく、氷見にこういったワインバーの文化を広めたかったという想いからなんです。
遅い時間でも開いていて、ワインやシャンパンが飲める店が氷見にあったらいいなって。スパークリングワインではなく、しっかりシャンパンを出すといったような。とはいっても、以前は形式に拘ったり、「ワインはこうじゃないと!」みたいな頭の固い部分がありました。今は全部そういうのを超えて、お客さんに楽しんで過ごしてもらえたら、それが一番いいと思うようになりましたよ。たまに、気付いたらカウンターのお客さん全員コーヒー飲んでる時もあったり(笑)でも、それでも全然いい。
元々、料理も全然出してなかったんです。本当にかんたんなおつまみ程度のものだけ置いてて。でも要望があって、少しずつ増えていきました。
(黒板いっぱいに書かれた食事メニュー。どれを食べても全て絶品なんです)
■サボテンのオーナーさん同様、マスターも懐が広いですね
お客さんが何を求めてるのか感じたいんですよ。求める人がいるから価値が生まれると思っているので。
他人は宇宙人という言葉があるように、相手の考えや価値観や趣味嗜好は分からないじゃないですか。だからこそ、お互いが共感できる時間を共有出来たらいいなと。お客さんの求めるモノ、感情、気持ちを大切にして、提供したい。そのために、勉強したり知識を付ける事も好きなんです。
■そういえば、店内には本棚があって、たくさんの本が置かれていますよね
これは、自分が本好きで置いているって理由が大きいかな。でも、何か要望やリクエストがあった時、出来ないから無い、ではなく、提供したいから知識を付ける。知っていれば提供できるし勉強してたら知らなかった事でも、だんだん分かってくる。そのために勉強する。知らない事を知れるのが楽しいんです。
知識を付けるための勉強だけじゃなく、映画を見たり、美術館に行ったり、そういう勉強も好きですよ。雰囲気やセンスを磨いて、感性を付けられる。そういうものって、別々の事に思えて、実は全部繋がってると思う。
(お店の本棚。料理のレシピからエッセイや哲学書、易学の本までジャンルは様々)
■マスターがこのお店を楽しんでいるからこそ、お客さんがとても楽しくお酒が飲める場になっているのだと思います。そんなマスターの今後の目標や展開は何かあるのでしょうか?
今はまだ詳しく言えないけど、これからも夜のお酒の文化を広めつつ、次の新しい展開はしていきたいな、……と。
ニコニコと笑いながら答えてくれたマスター。詳しくはまだ言えないと仰っていましたが、その笑顔を見れば頭の中ではもう次の楽しい事を考えているのが伝わってきます。
インタビューが終わった後、いつかこのお店でアイドルオタクのオフ会をやりたいとマスターに話してみました。
お店を全席アイドルオタクだらけにして、お酒を飲みながらライブがどうだったとか、推しているグループやメンバーや好きな曲について語り合える場所にしたいと。
「いいね!それ凄く楽しそう!俺もアイドルの事勉強しておく!!」と即答してくれたマスター。
「上を貸し切りにして使ってもいいんだよ」と言って2階席を案内してくれました。
しかし結局、「でも俺もアイドルオタクの世界の話興味ある!」とのことで、いつか開催の際にはカウンター席で、と盛り上がりました。
今回のインタビューでマスターと話していて、まずは自分が楽むことって一番大切だなと、当たり前の事ですが改めてそう感じました。
自ら楽しんでいれば、周りの人やお客さんも楽しくなる。「楽しい」が広がっていった先に、気付いたら自然と楽しい笑顔や楽しい人が溢れる場所が出来ているのかもしれませんね。
いかがだったでしょうか。何事も楽しむ気持ちと探求心を大切にするマスター、中路さんの移住経験談。
機会があれば、中路さんの楽しい気持ちが溢れるお店に足を運んでみてはいかがでしょうか?
まだ見ぬ楽しい何かに、出会えるかもしれません。
【Wine & Izakaya シャノワール】
〒935-0017 富山県氷見市丸の内9−4
0766-72-1224
18:00~27:00
定休日:毎週日曜 月曜