こんにちは、みらいエンジンスタッフの岸本です。
かねてより、氷見の町中にはレトロが生きていると感じ、当サイトの記事(「生きた昭和でレトロを満喫。『喫茶モリカワ』」、「レトロな町と、海辺のランチ」)でも伝えてきた筆者ですが、
生きた昭和レトロが味わえるお店がまた一つオープンしたと聞いて、弊社スタッフ藤田と共に早速お邪魔いたしました。
こちらがそのお店。「裏日本遊戯研究所」さんです。
何とも言えないこの外壁の色、扉や街灯。
ナントカ荘とか書いてありそうな、昭和の雰囲気が漂っております。
一歩中に入ると、期待を裏切らない完璧な昭和感。
入店1秒で「懐かしい」という感覚に全身を包まれます。
しかもここにあるもの全て、展示品じゃないんです。
全て現役。このレトロなポットからお茶を注いで頂いた時、謎の感動がありました。
一気に「友達の家にゲームしに来た感」が高まります。
ボードゲームやドンジャラ、頭脳ゲーム、野球盤など。計100種類以上のアナログゲームで実際に遊ぶ事が出来ます。
おやつや飲み物は持込み自由。
店内には駄菓子販売もあるので、ふらっと遊びに来て、ちょっとおなかすいたなって時にはその場で買って駄菓子を味わうことも出来ます。
さすがにこちらは展示品……と思ったら、なんとこれも商品!
買う事が出来ます。
こちらのバッグも、買えちゃいます。
こちらが店主の坪倉さん。
神奈川から去年の10月に氷見に来られた、移住者さんです。
こちらはお店兼住宅で、古い物件に自ら手を入れ修理して住まわれているそう。
中庭を見せてもらいました。
大きな物干し台と家庭菜園が出来る庭があるなんて、すごく良いですね。
素晴らしいです。
筆者、実は洗濯物を干す場所がなくて、家の中に狭々と小さな物干し台を広げているので羨ましいです(笑)
やっぱり庭に干せるっていいなぁ。
こちらは2階。
2階に上がってすぐ、真新しいイグサの香りが出迎えてくれました。
ここは天井の板が落ちていたほどボロボロだったのを自力で修理したそうで、畳も新しいものに入れ替えたのだとか。
懐かしい雰囲気にタイムスリップしたような気分を味わいながら、お話を伺ってみました。
―移住されたきっかけは何だったんですか?
「去年(2020年)の9月頃だったかな。鎌倉に住んでいたんだけど、都会での暮らしに疲れてきたり、違和感を感じるようになってきて。田舎での暮らしに想いを馳せつつ、いつまでも首都圏や都会で暮らしている自分がなんだかダサく思えて来て、全国各地の空き家バンク巡りの旅をしようと決めて動き出したんです。緊急事態宣言が発令された後で外出する人も少なかったし、Go To トラベルが始まって、安くホテルに泊まれたりする良い時期だったんですよ。それで、全国各地の空き家バンクを検索して、良さそうだなと思ったところに青春18きっぷを使って電車で行く、ということをひたすら毎日繰り返してました」
―全国!すごいですね
「北は新潟から。西の方へ進んで、九州は佐賀あたりまで行って、四国も巡りました。色々見て、最初は賃貸ではなく中古の物件を買うつもりでした。氷見に来た時に一つめの物件を見に行って、ちょっと気に入ったんだけど、予算には少し見合わなくて。でも氷見は良い場所で気に入ったから、賃貸で探すことに切り替えて、今の家に出会いました」
―凄く良いご縁があったわけですね。新潟から九州まで全国規模で見た上で富山県、そして氷見市に決めたのはなぜですか?
「最初は暖かいところで海が近い場所を探していました。車を持っていないので山奥すぎる場所だと生活が難しいし、かと言って、都会に近くなると騒がしくなる。
都会と田舎の中間ってなかなか無くて。
さらに、こういった昭和時代のものが好きなので、エリア的に、都会と田舎の中間で、かつ、昔の雰囲気が残っている場所がいいなと探していました。
あと僕は住む家にはとてもこだわりたい性分で、絶対に古い家が良い!と思って探してました」
―古き良きものを求めていたんですね
「そうですね、かといって昭和よりももっと古い時代の名残があるような古民家でもないんです。それはそれで良いけど、自分が住むなら昭和の風合いが良い。
そうやって探していて氷見に来た時に、土地も、物件も、街の空気感も何も違和感が無くて、肌で「自分に合う!」と感じました」
―非常に運命的な出会いを果たされたのですね
「そこから北陸や富山の長所を調べた時に、地震や台風が少ないというのが非常に魅力的だったんです。
今後、日本全体で大きな災害の影響を考えた時、住む場所としてそういった天災の影響が少ないというのは大事ですよね。そういった面でも氷見や富山には大きな可能性を感じているんです」
―立山連峰のおかげですよね。その恩恵はとても大きいと思います
「それと、何と言っても藤子不二雄A先生の出身地だという事が大きかったんです。
A先生の妄想や想像から生まれたキャラクター達が、こうして現実をより愉快してくれていて、それは本当に凄いことだし、これから藤子不二雄先生方のような妄想人がもっと出て来たら日本はさらに面白くなっていくんじゃないかな。
町中にキャラクターのモニュメントもたくさんあるし、全国的に氷見のような場所が増えていけば面白いなと思っています」
―昭和を代表する巨匠の一人ですもんね。では、氷見に住み始めてからの実生活はどうですか?
「何も困らないですね。やっぱりここにきて良かった、って毎日思っていて、何の不満も無いです。
ご近所さんもゆったりしていて穏やかな人が多い。家のすぐ近くに神社があって、年末年始にみんなで集まって掃除とかするんですけど、そういう事って関東の方ではあまり無いんです。町内会とか、みんなで何かをするとか、町内会費を集めに来るとかそういった事って大事ですよ。人間関係やどういう共同体を作り上げるかを考えた時に、やっぱりこういう場所は必要だと思います」
―引っ越して最初の冬に記録的な大雪でしたが、どうでしたか?
「雪かきも楽しんでいるし、車を持たずに生活していますが、近くにお店もたくさんあるので、雪で買い物に行けないという事も無くて全く問題が無かったです」
―凄い……たくましさを感じます
「あと、町中に商店街が残っているというのも氷見を魅力に感じた部分のひとつでした。現状はシャッターが目立つけど、距離が長くて、昭和時代の看板とかあの時代のものがそのまま残っていて、自転車で走ってても面白いです」
―レトロ感が生き残っていますよね
「なかなか無いんですよ。全国の空き家バンクを巡って商店街も見たけれど、完全に取り壊されていたり、手が入って現代風に新しくアレンジされていたり、昭和感が残ったまま現存している商店街ってなかなか無いんですけど、氷見にはそのまま残っている」
―氷見の町おこしや活性化というところにも興味があるんですか?
「氷見の町おこしや活性化というより、僕は関東圏に住んでいる人に、もっと地方や田舎の良さを知って、関東以外に散らばって欲しいと考えてます。
日本全体を考えた時に、そうなった方がいいんじゃないかなって。
コロナウィルスの事がある今、まさに変わるタイミングですよ。みんな今移住すればいいのに、もっと広いところに出ればいいのに、と思います。
富山は地震も台風も殆ど無くて完璧だし、氷見は公共財が多く、一人当たりが享受できる豊かさが都会に比べたらすごく多いんです。そういった田舎暮らしの良さや、氷見や富山は広くてゆったり豊かに過ごせるよって知ってもらうためにSNSに投稿したり、行動しています」
―熱い信念をお持ちなのですね。では、お店について聞かせてください。
「この場所は大人の遊び場になって欲しいな。僕はこういった昭和の時代のものが好きで、この時代のものは日本の近代史でピークだと思っているんです。昭和ってちょうど良い時代だったと思う。その時代のモノには、これからの時代に僕たちが生きていくうえで活用出来るヒントがあると思っています。
小さな子供は自分で遊びを考えられる天才だから問題ないんですけど 段々と成長するに従って遊ばなくなって来て、しかもそれを大人が誘導するような事があってはいけないと思うんですよね。人生は楽しんで、遊んでこそ。だから人生を本気で遊ばなくなった人や、遊び方を忘れた人にこそ来て貰って、この時代のモノに触れて、考えるきっかけになればいいなと。
遊びや妄想から面白い日本を作っていき、そして世の中がもっと健全な形になればいいなと思ってるんです」
―健全というのは、具体的にはどうなれば健全なんですか?
「それは分からない。分からないからこそ過去に学んで、僕らの祖父母の世代はどうだったんだろうと想像するしかない。
例えば、町内会ひとつにしても、こういった集まりをすることで、人間関係にどういったメリットや利点があるのかとか、その共同でやることによって人間の意識がどう変わっていくか、国家や世界レベルにどう作用していくか、僕らがイチから考えなきゃいけないんです」
―健全な世の中の形を模索しつつ、現代社会の基盤となっているものを見直して変えていきたいという事でしょうか?
「幸福の在り方を考えてみた時に、ただ一か所にしか住んだことない、ここでの暮らししか知らないというところから新しい考え方は生まれないと思うんですよ。
だからみんなに、「今住んでいる場所を離れて、田舎でゆっくり考えてみたら?」と提案したいと思っていて、まず自分が実践してるというところかな」
坪倉さんの話がとても熱くて筆者のレベルの及ばないところへどんどん進んでいきます。なるほど、と頷くことしかできません。
まさに「ここではない、どこかへ」ですね。某ロックバンドの有名な曲です。
己の中に芽生えた違和感や不足感を埋めるため、答えを求めて「ここではないどこか」に想いを馳せる。
「ここ」というのは、今立っている場所であり、時代であり。
その終着点は意外と自分の原点かもしれないし、まったく新しい未知の場所かもしれない。
ここではないそこへ行けば、ここには無い何かがあって、新しい価値観や考え方や生き方を教えてくれる、または得る事が出来るのだなと、そんな風に感じました。
筆者にとって移住とは、住所が変わるという程度の解釈でしたが、そこに求めるものは暮らしの質や在り方であったり、価値観やものの見方の新しい切り口であり、見いだせるものは無限大なのですね。
移住というものへの新しい捉え方を坪倉さんの姿勢に教わった気がします。
(坪倉さん夫妻)
お話を聞き終わってから、店内の商品を改めて眺めてみました。
パッケージの一つ一つを眺めても、テンプレ通りのものをコピー&ペーストしたような無機質さは無く、作り手の「こういうおもちゃを作ったら楽しいのではないか」とワクワクする心が伺えるものばかり。
まさに昭和が語り掛けてくる空間です。
最後に坪倉さんはこう語りました。
「結局、僕が好きな事をやっているだけなんだけどね」
昨今、手軽さや使い捨てのものが大量生産された時代を経て、ハンドメイドブームが到来したのは、「手作りのぬくもり」や「作り手の技量に価値を支払う」という価値観、そして作り手の「好き」が色濃く込められているモノが人の心を動かすからだと私は思います。
そう考えると、生活の中に作り手や人の心が見えやすい田舎暮らしも、今後もっとフィーチャーされていくのかもしれません。
『裏日本遊戯研究所』
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