移住支援員の山下です。私は日頃、移動スーパー「とくし丸」に乗って氷見市内のいろんな集落に食材や日用品などを販売して回ってます。
販売対象になるのがほぼ70代以上の女性、おばあちゃんたちなのですが、その食生活というか染み付いた食習慣というのが段々と見えてきて面白いです。
日頃使う調味料から地域性が見えてきますし、季節によっても特徴が出てきます。
今回はおばあちゃんたちに愛されている食材から、氷見ならではの食文化をご紹介していきたいと思います。
醤油はやっぱり「甘口」
氷見に限らず加賀の文化圏では昔から甘味料を含んだ甘口醤油が好まれます。私は同様に甘口醤油文化の九州出身なのであまり気にならなかったのですが、特に関東出身の方には日頃使う調味料の味が方向性からして違うというのは衝撃的みたいですね。
甘い醤油に慣れていない人が刺身に直接使うとびっくりして以後受け付けなくなってしまう光景も見ているので、味を試してみたい方は煮物の味付けなどショックの小さいところからはじめてみるのがよいでしょう。
とくし丸では地元氷見で作られた醤油「朝日松」がよく売れています。ほかにも地元の醸造元でつくられた醤油がいくつも並んでいて、出身地や好みに合わせて好きな銘柄を指定されるので、それぞれの方のルーツが垣間見えるのが興味深いですね。
スーパーの売り場でも、普通の醤油よりさらに甘い「甘口」の方がよく売れているようです。夕方、甘口のある棚は先に空になっていました。
細かすぎる昆布のオーダー
スーパーでも昆布売り場の広さに驚く人が多いのですが、小さな軽トラで走るとくし丸でも全部で10種類以上の昆布を載せています。
おぼろ昆布もより粘りの強い「がごめ昆布」入りのものと普通の昆布と2種類。
塩昆布はなぜか香川県小豆島にあるメーカーの「さざなみ」が定番。はじめて「さざなみくれんけ?」と聞かれた時は塩昆布のことを指していると気付くまで時間がかかりました……。
お正月に餅をつく家もまだまだ多いのですが、きざみ昆布を混ぜ込んだ昆布餅をつくるのが富山らしいです。きざみ昆布も写真の「茶切」のほかにもう少し幅広の「角切り」もあり、家によって好みが違っているようです。歯ざわりがだいぶ違うでしょうね。食べ比べしてみたい。
おばあちゃん達から好みの昆布を聞き出して持っていくのはなかなかのミッションなんですが、ちゃんとリクエストに応えられると気持ちいいですよ。
他にも酢こんぶやこんぶ飴なども人気で、本当に富山の人たちは昆布が好きなんだなあと感じずにはいられません。
行楽のお供!?謎の粉「おちらし」
そして最後、一番なぜ売れるのかがわからなかった食材が「おちらし」です。
秋を迎えたある日、食品担当の方から「『おちらし』が売れますよ」と教えてもらいました。「おちらし?」一度聞いただけではどんな食べ物なのか想像がつきません。
これが「おちらし」。ただの粉。中途半端な色味、そして「野・山・海へ いつもみんなのお友」というフレーズが謎をさらにかきたてます。
こんな粉が売れるの?と半信半疑で持っていったところ「懐かしいねー、小さい頃よく食べたよ」と言いながら次々と買っていくので感心しつつ、なんだか異世界に紛れ込んでしまったような気すらしたのを覚えています。
実際のところ、「おちらし」は煎った大麦を挽いた粉です。食べ方としては・お湯と砂糖を入れて練る・柿などの果物を混ぜ込む、などがあるそうです。でもやっぱりこの粉を外に持ち出して食べるという景色に納得が行かなくて、未だにモヤモヤしてしまうのでした。売れるんですけどね。
きっとおばあちゃん達の中にある幸せな思い出を呼び起こしてくれる食べ物なのでしょう。
ちなみに今とくし丸で売っている「おちらし」は高岡のメーカーのもの。ここが作っている「三日餅粉」はお盆にお団子を作るために指名買いされる事が多く、またピンポイントな売れ筋商品なのです。ニッチだけどおばあちゃん達の心を掴んでいるメーカーの強さ。この仕事でなければ知ることが出来なかったかもしれません。
氷見で長年暮らしてきたおばあちゃん達に愛される味をご紹介しました。これらの食材をさらに美味しく食べられるレシピを教えてもらって、お伝えしていければと思います。