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2017.11.08

氷見にマルシェができるまで【第2回】

藤田智彦
藤田智彦
移住相談員

【第2回】

前回は7月に開催された『うみのアパルトマルシェ』についてご紹介しました。氷見に新しく生まれたマルシェとして多くの人が訪れたイベントはどのような経緯で生まれたのか……今回はその舞台裏のお話です。

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氷見市中央町商店街。そのはじまりは現在も象徴的に建ち並ぶ防災共同ビルの建設時に遡ります。道路の拡幅に合わせて、当時建設省が進めていた防災街区整備の事業に則って最先端のビル群が建設されることになり、その経緯のなかで商店会組織を法人としての商店街組合とすることになりました。
共同ビルの特徴は、文字通り数軒が共同で1棟のビルを建てることにあります。そのおかげで外観はすっきりと整い、両側のアーケードも手伝って統一された外観の通りになりました。地元の人が「なんちゅう素晴らしいもんができた」と目を瞠ったという共同ビル商店街には、買い物客はもちろん、全国からの視察も絶えなかったといいます。

しかしそんな中央町商店街も、全国にみられるように、時代とともに客足は落ち次第に店の数も減っていきました。発足当時加盟の70軒弱すべてが商売をしていた商店街組合も現在では半分ほどが店を閉め、現在では空き家も見られるようになりました。
そして昨年、中央町商店街にさらに〈危機〉となる出来事が起こります。商店街の北の玄関口である『北の橋』が老朽化のため2年半間通行止めとなることが決まったのです。中央町商店街はその大半が迂回経路の内側となり通行量の減少は必至でした。



この事態を受けて商店街は会合を実施。行政の担当者とともに地域おこし協力隊として中心市街地の担当をしていた私も参加して、「橋の工事期間中、商店街はどうするべきか」や「工事を終えた後、将来を見据えてこの地域はどうありたいのか」という点について議論を深めました。
そこで出た課題は「中央町商店街は商店主の高齢化が進み、かつ後継者が少ない」というもので、それでも商店街としてもう一度活気を取り戻すには「若い世代がまちで商売・生活をする」ことが必要という結論に至りました。



若い人を呼び込む――目標を定めたのはよいのですが、問題はその方法です。
「空き店舗があるからここで商売してください」、「ここで生活してください」といったとしても、それで人が集まるようならそもそも困っていないはず。
若い人に商店街でお店を出したいと考えてもらうためには、まず「ここで商売をしてみたい」と思ってもらえる商店街にならなければなりません。卵が先か鶏が先か……というような議論です。
この問題について新しい視点から考えるため、商店街のメンバーでない移住者を含めた氷見に住む若者にも声をかけました。「まちの使い手」としての立場から、どういう商店街であれば若者はまちを楽しめるのかという意見を求めたのです。



そこで生まれた作戦こそが、マルシェという「イベント」でした。
いきなりお店を構えて商売をすることは難しくても月に1度程度であればやってみようと思ってもらえるはず。マルシェは「あり得るかもしれない未来の商店街のひとつの形」、それを実現することで若者が「楽しい」と思えるまちのイメージをつくっていくことがこの作戦の目的でした。



「橋が通行止めになっているということは、逆に考えれば歩行者天国にもしやすいんじゃないか?」
「道路を公園に見立てて自由に楽しめる空間になったらいいよね」
「商店街には緑が少ないから人工芝を敷いてみるのはどうだろう」
「ベンチやテーブルもプラスチックでは味気ないから木製で手づくりしてみるのは?」
――意見は次々に飛び出し、いよいよ作戦が動きはじめました。

2016年の秋からスタートした作戦会議は年をまたいで本格化。3月には商店街の空き店舗を使ってワークショップを行い、マルシェで使うベンチやテーブル、特製屋台をつくりました。屋台については「他にないマルシェの顔になるようなものを」と富山市在住の家具職人さんに依頼してコンパクトでオシャレなデザインのものを設計してもらい、こちらもワークショップでつくりあげました。



備品の準備と並行して行われたのが、マルシェのコンセプト決めです。
今回のターゲットは若い世代――特に休日の行動の決定権を握りやすい女性を核とすることにしました。若い家族がのんびりまちと買い物を楽しめるように、そしていつかまちの「使い手」から「担い手」になっていってもらえるように……
そうしてできあがったコンセプトは、

海風が吹き抜ける商店街で、なかまと遊び、なかまと出会う
じぶんたちの手でつくる“遊び場的”マルシェ

また、タイトルは『うみのアパルトマルシェ』に決まりました。
このちょっと変わったタイトルは、ただのマルシェではなく「アパルトマン」で行われるマルシェなのだという意味があります。築50年弱になる共同ビルを、ただ古びた建物としてみるのでなく、パリのアパルトマンのように古き良きものを大切にするライフスタイルを発信していきたという想いが込めてつけられました。
チラシのデザインもそうしたメッセージを軸に、若い女性の感性に響くものになるようにデザイナーさんと協議を重ねました。



コンセプトやデザインが決まって、最後にもっとも重要なお店への出店依頼。
初回は提示できるマルシェの具体的なイメージがないため苦戦が予想されました。しかし氷見を中心に近隣で活躍されているお店のなかからお声掛けしてみると、コンセプトへの共感と地域貢献の想いから続々と参加を決めてくださり、期待以上の豪華な顔ぶれのマルシェとなりました。
こうしてついに、作戦『うみのアパルトマルシェ』は決行の日を迎えたのです。【第3回につづく】

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