こんにちは! 考えるパンKOPPEのたけぞえあゆみです。
本日は「里山スギ板倉の家」の竣工見学会におじゃましました。
若葉しげる自然に囲まれた美しいお家で、どっしりとした安定感もあります。
外壁も全て杉材です。軒下にあれば塗装も必要なく、このまま経年変化を楽しめるとのこと。
この家は令和6年能登半島地震で被災しましたが、地元産のスギ材と兵庫県から送られたヒノキを使って再建されました。
その建て方は「板倉構法」と呼ばれます。古来日本の神社や穀物倉庫を造ってきた木造建築技術を今に応用し、杉の厚板で屋根・壁・床を構築するもので、4寸の柱と1寸の厚みの板を基本構造がつくられています(1寸は約3cm)
中に入ってみましょう。私たちは縁側からおじゃましました。
屋根から壁、床に至るまで張り巡らされたきれいな無垢材!
以前の家の梁や建具、瓦はそのまま生かして使われています。
こちらの壁も、板倉構法の特徴です。縦の柱と柱の間に、厚材の横板をパネル状にして組み合わせてあります。
こうすることでたとえ火事になっても延焼しにくく、自然素材なので有害なガスを出すことはありません。
地震が起きても、厚みのある板のしなやかな粘り強さによって持ちこたえることができるそうです。
この白いわたはポリフォームという、ペットボトルと同じ成分でできています。熱を逃さず、燃えてもガスを出さない断熱材です。
床下の基礎部分は余った瓦を砕きモルタルと合わせて再使用されているそうで、多くの空気を含みます。夏は涼しくて風通しのよい空間です。
杉の年輪が美しいですね。こちらの床板は4cmの厚み。
屋根にも無垢材が二重に貼られ、さらにその間に断熱材が使われています。
冬は薪ストーブ一つで家全体が温まり、夏は風通しが良く木材が湿度を吸収するため涼しく過ごせるのだそうです。クーラーもいらないと聞き、驚きました。昨今の猛暑を過ごすには、環境負荷は心苦しいがクーラーを使い続けるしかないと思い込んでいたからです。
お風呂の壁は、漆店店主と富山大学生による拭き漆ワークショップで塗られました。水回りは耐水性を持たせるために漆を塗ったそうです。
キッチンの立派な一枚板。7回ほど漆を塗り重ねたと聞きました。とってもきれいです。私も木のテーブルでの調理に憧れますが、水を吸いやすい無垢材を清潔に保つのは一苦労です。自然素材だけを使って耐水性を保つ、このような方法もあるのだと感心しました。
この障子は元の家で使われていたものです。建具を再利用するため、建具屋さんで歪みを直し、富山大学生によるワークショップで施主の方と共に配置や活用方法を決め、五箇山の手すき和紙を貼ったそうです。
窓の外には一面の里山。
氷見市では昨年の震災で、たくさんの家がなくなりました。解体するにも建材が様々で、分別が非常に難しかったり、再利用できなかったり、立派な建具や瓦も全て捨てられてしまったりしています。また作り手は減る一方です。しかし昔から伝わる建具には、日本の湿潤な気候に対応するための知恵と技術が詰まっています。そして美しい。
板倉構法の家は「一般社団法人日本板倉建築協会」によってその技術が広められています。冊子を拝読すると、過去の震災の仮設住宅を板倉構法で建て、役目を終えた後はそのまま他の被災地の仮設住宅に使われたとありました。
それは取り替えの効く材でできていること、厚みがあって丈夫で変形が少ないこと、組み立て方次第で土地の条件に合わせられ、あらゆる気候に対応できる杉材を使っているからこそできることだと思います。
そしてこの家には、地元・氷見産の杉材がふんだんに使われています。
杉は成長が早く、ある程度の大きさになったら伐採します。それはもったいないのではなく、里山の保全のために必要なことだそうです。また植樹することで二酸化炭素の吸収効率を高め、今後の林業に十分な森林をつくります。
伐採した木は地元の建築に使うことで、地元で製材し、配送コストも少なく済み、環境保護にも役立ち、地場産業支援、里山保全、地元の大工さんの技術継承にもつながります。
この日も、地震で被害を受けた能登の各地から見学にいらしていました。
様々な選択肢はあるけれど、これからも家で、この地域と、この環境に住み続けるためにはどうしたらよいのかを考え、迷いながらも相談にいらしているようでした。
能登地震で被災した私たちにとって最も大きな課題は、家です。この「里山スギ板倉の家」は、能登地震からの復興の一つの答えだと思います。
プロジェクトに関するお問い合わせ先 NPO法人とやまの木で家をつくる会 (090-3764-5478)