氷見に暮らす私たちと、
氷見に移住するあなたが、
一緒につくる、まちの未来。
2019.10.25

街中の明日を「考える」。

北條 巧磨
北條 巧磨
写真家

氷見市へ移り住み、すでに3ヶ月以上もの月日が経ちました。
 
住まいの拠点を移すことは新しい出会いの連続で、移り住む前と後では、物事に対する考え方や価値観も変わってきたように思えます。同時に、氷見で暮らす人々と対話をすることで、この街が抱える課題も少しずつ見えてきました。
 

 
「街中に活気が無いよね。」
 
「若い人の行き来が少ない。」
 
「シャッターがいつも下りた街並みは、すごく寂しいです。」
 
氷見が抱える代表的な課題のひとつが、この「街中問題」ではないでしょうか?上の写真にある、1970年前後に建設された中央町商店街共同ビルの景観は、”防災ビル”としての機能を果たしており、駅から徒歩圏内である利便性も相まって、現在では想像出来ない賑わいを昔は見せていたようです。
 
過去に公開された記事でも紹介されているように、氷見市中央町の共同ビルは、基本的に3階建て(又は4階建て)構造となっており、店舗兼住居として使われていました。しかしながら、高齢化の進行と同じく建物の老朽化により人々は住まいを移し、今現在のシャッターで閉ざされた街並みを残すこととなってしまいました。
 
【参考記事】
 
商店街レトロビルの元洋食屋さんではじめる小商いのある暮らし
 
防災建築街区再生支援制度の研究-富山県氷見市中央町を例として-
 
それでもなお、街の中心に位置する中央町商店街共同ビルは、見逃すことが出来ない”街の財産”であり、工夫次第では、再び人々が集う空間を創造できる可能性が残っているのです。幸なことに、自分の好きなことや得意なことで、氷見の街中をより良くしたいと考えている人々が沢山おられることを、移り住んで改めて実感しました。
 
今回ご紹介する「考えるパンKOPPE」さん(以下敬称略)も同じく、街中への思い入れを抱くご夫婦。かつて中央町商店街にあったお店を引き継ぎ、改築へ経て自身のお店をオープンさせます。
 

 
【参考記事】
 
「考えるパンKOPPE」って何?空き店舗をリノベしてつくりたいお店があります!
 
「考えるパン KOPPE」の心のこもったパンと「からしま蚤の市」
 
考えるパンKOPPEができるまで
 

 
考えるパンKOPPE」との出会いも、氷見へ移り住んでから。この街に対する思いや子育てをしながらお店を続けることへの思いなどをお話しする中で、是非お店が生まれ変わる様子を写真で残しておきたいと思い、取材のお願いをしたところ快く承諾して頂きました。
 

 

 
以前は、酒屋さんだった建物がパン屋さんに生まれ変わる。古き良き街のたまり場が、老若男女の人々が集う新しい空間へ。その過程を想像するだけでも、わくわく心が踊るのは筆者だけしょうか?
 

 

 
1階部分は電気もない為に薄暗く、夏の湿っぽい空気が依然として取り残されたような空間でした。蜘蛛の巣が張り巡らされた路を進むと、裏庭へ続く開けた空間へ。ご覧の通り、木材の状態も悪くなく、建物全体が老朽化していると予想していただけに裏腹な印象を持ちました。
 

 

 

 

 
階段足場のタイルは所々剥がれ、比較的整った部分を探りながら2階・3階へ上がると、そこには当時の生活の面影が残されていました。
 
使われていた家具や置物など、かつて住まわれたご家族の人となりが垣間見え、昭和から平成へと時代を生きた暮らしの情景が、私たちの脳裏に浮かぶようです。
 

 
それでもやはり、人の暮らしがない建物は見た目以上に老朽化が進むもので、特に配管などの生活に欠かせない部分の問題は、この物件も例外ではありませんでした。
 

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建物の外観から屋上へと撮影を進める間、曇天な空模様も、屋上へ顔出す頃には、雲々の流れが分かる程の天候へ回復していました。ここから眺める海側の景色は、まさに氷見の豊かな暮らしを象徴するそれで、純粋に羨しくなるほどの清々しい潮風が吹いていたのを記憶しています。
 

 

 
見下ろした街並みの様相も、普段では出会わない新鮮な光景たち。数年後・数十年後、行き交う人々が増えるたび、ここで新たな物語が生まれることを願います。
 
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昨夜まで降り続いた雨は、屋上に水溜りを作っていて、その青い雨水を避けた片隅から、最後に、ある家族の写真を残しました。
 

 
ファインダーを覗きながらふと浮かんだのは、子どもたちの笑顔は「街の希望」そのものであるのだと。当たり前のことかもしれませんが、大切なことに気付かされたように思います。今の時代、辛い出来事や心を傷める情報の方が多いかもしれないけれど、子どもたちの笑顔に何気なく救われた瞬間を、皆さんも経験されたことがあるのではないでしょうか?
 
笑顔が溢れる街は、希望に満ちている。
 
街に関わる人々が、子どもたちの明日を見守る。そんな温かい雰囲気が根付く街中があったなら。
 

 
先人からのバトンを受け取り、これから生まれ変わろうとしている「考えるパンKOPPE」。彼らのお店が産声をあげる日は、街中の新たな暮らし方が始まる第一歩かもしれません。
 
時代を繋いできた街の歴史で、まだまだ”ひよっこ”な家族の物語。この街の「希望」を、皆さんの温かい心で見守って頂けたらと思います。
 

 
閑散とした街中の、シャッターに閉ざされた壁の内側に足を踏み入れると、そこには「希望」が残されていました。先人たちの思いを受け継いで、今を生きる私たちに何が出来るのか?どう生かしていくのか?常に問われているように思います。
 
次の世代と明日へ向かって、私たちは「考える」ことを止めません。

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