こんにちは!TomorrowWorks.の北條です。
今回は『日名田屋餅店の事業承継成立』に関するトピックをお届けしたいと思います。
テレビや新聞でご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、2023年9月27日に実施した調印式にて、松木菓子舗(氷見市鞍川)代表の松木功太さんが、日名田屋餅店の後継者として新代表に就任したことを正式発表しました。
調印式から(閉会の挨拶を行う田中宏昌さん[税理士法人田中会計 所長])
調印式から(メディア向け写真撮影の様子)
新代表について簡単にご紹介しますと、松木さんは松木菓子舗の3代目にあたる方で、『CYCLEようかん』や『蒸ヨンカク』など、和菓子のジャンルに捉われない創造性あふれる商品を多数販売しており、そのセンスと技術の高さはすでに多くの人々から認知されています。
松木さんの人となりは、TomorrowWorks.内のコラム記事にて詳しくご紹介しています(もちろん当時は、このようなことになるとは夢にも思いませんでした)。
< 松木さんの「働く」を考える。>
■ 幸せは、まちの小さな和菓子屋から。(記事公開:2021年5月12日)
本件において、TomorrowWorks.(後継者マッチングサービス<氷見で継なぐ。>)は、後継者募集記事の制作および公募からマッチング、調印式開催までを支援させていただきました。
後継者募集記事(看板商品は「もちパイ」。地域から愛されるー)が2021年9月6日に公開されてから調印式当日までの日数は722日。様々な関係者が携わるなか、日々の積み重ねがこのようにして実ることができて本当に嬉しく思います。
関係者の方々、陰ながら応援してくださった皆さま等々に向けて、心より感謝申し上げます。
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時が経つのは早いもので、『継業のすゝめ』という記事を書いてから丸1年が経ちました。この記事では、これから事業を継ぎたい方に向けた内容をお届けしましたが、今回は「お店が残り、そして続いていくことは、地域全体や私たちにとって、どんな影響をもたらすのだろうか?」というテーマを軸に、皆さんと一緒に考えていけたらと思います。
というのも、今年に入ってからより一層、閉店や廃業に関するニュースが増えてきていると思いませんか?コロナ禍をようやく乗り越えたと思いきや、原油・原材料高騰などの社会情勢も相まって、お店を閉めざるを得ないケースが増えているのです。後継者不足という社会課題が、他の事情と絡み合いながら、私たちの暮らしに直結するところまで来ています。
このような状況の中、『まちのお店が残る』ということを改めて考えてみる行いは、日々の過ごし方を少しだけでも変えてくれる気がしています。
それでは、日名田屋餅店の事例を通して私が感じたことをお伝えしていきたいと思います。後継者不在だったお店が、第三者承継によってこれからも残り続けることの様々な影響を知っていただけたら嬉しいです。
● 地域の価値が残って、新たな価値が生まれる。
後継者募集記事を公開した際には「お店が無くなるかもしれないと思うと悲しい・・・」や「無事に後継者は決まりました?」などなど、本当に多くの方から心配や気遣いの声が寄せられました。そして調印式の後も、祝福と安堵のメッセージを多数いただいています。生の声をいただく度に、日名田屋餅店は地域にとって大切な存在であると再認識しています。
松木さんは日名田屋餅店のことを「地域にとってかけがえのない財産」とおっしゃっていました。お金に換算できない価値も含めた“財産”は、日名田さんをはじめ、様々な方たちの想いが積み重なったからこそ存在しています。
その財産を守りつつ、今後は松木さんによって新しいアイデアが盛り込まれ、また新たな価値が生まれていくことでしょう。これからの展開を楽しみに、温かく見守っていきたいですね。
● 地域の文化が残っていく
以前、氷見出身の方とお話した際に「子どもの一升餅祝い(*)の餅は日名田屋餅店でお願いしたのですよね」という話題も挙がりました。冠婚葬祭の他にも、お祭り時の特製お菓子や季節のお菓子など、日名田屋餅店は氷見暮らしに寄り添う存在です。そのようなお店は、地域ならではの文化や慣習を継承し、次世代へと伝えていく役割も担っています。
* 1歳の誕生日を祝う行事。祝い方は地域によって様々で、一升餅(約1.8kg)を子どもに背負わせたりします。
和菓子文化が今もなお残っている地域には、その背景が必ずあり、紐解いていくと地域の新たな魅力を発見できることもあります。
能登地域の伝統菓子『おだまき』(日名田屋餅店公式Instagramより)
● お店が続くことの経済効果
ひとつのお菓子ができるまでには、もち米や小豆などの様々な原材料が使われています。そして、地元農家さんをはじめとして、多くの人たちがお菓子づくりの工程に携わっています。つまり、私たちの手にそのお菓子が渡らなくなれば、その工程に関わる全ての人たちに影響が生まれてしまうのです。
反対に、新たなヒット商品が生まれたり、新たなお客さんがお店に訪れたりすれば、また新たな流れが生まれることを意味します。新しい仕事や雇用も生まれるかもしれません。お店が残ることは、地域経済の悪循環を止めるだけでなく、好循環をもたらす可能性を秘めているのです。
氷見の美味しさがギュッと詰まったもち米(日名田屋餅店公式Instagramより)
● 地域の人たちとの交流が続く
初めて氷見を訪れる方や移住者の方にとって、地元の人たちや色々な世代の人たちが行き交うお店は、その土地の空気感を感じられるこの上ない場所だと思います。
『もちパイ』のような名物商品をきっかけに会話が盛り上がるまちって、なんだかほのぼのしますよね。今ではSNSなどのデジタル上でもコミュニケーションが取れる時代です。地域ならではのお店が残ることは、リアルでもデジタルにおいても、人と人を結ぶ架け橋になるのです。
もちパイを氷見のお土産として買ってくださる県外の方も
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ここまでは、お店が残ることの影響を色々な角度から考えてみました。最後に、お店が残ることの要因について、私の思うことをお伝えして終わりにしたいと思います。
過去に関わらせていただいた2件のマッチング事例から感じるのは、マッチングに至るまでの全ての出来事が伏線的な役割を果たしていた、ということです。もしも、それぞれの出来事がひとつでも欠けたとしたら、未来という今は訪れていないはずです。不思議な巡り合わせは、偶然でもあり、必然でもあったと感じています。
一人ひとりの行いが巡り巡ったからこそ、お店が残り、続いていく。
だからこそ、今日を生きる私たちの小さな選択は、他の誰かの明日を描いているのかもしれません。